今月の学校会計のチカラは、決算留意事項を取り上げています。第3週目は、学校法人会計基準の改正により新しく導入された活動区分資金収支計算書の内容について考えていきます。
1.活動区分資金収支計算書について
平成25年改正の学校法人会計基準では、資金収支計算書の内訳として新たに活動区分資金収支計算書が導入されました。資金収支計算書で計算した支払資金(現金預金)の流れを3つの活動に区分して収支を計算します。
3つの活動とは、①教育活動による資金収支、②施設整備等活動による資金収支、③その他の活動による資金収支をいいます。先週の学校会計のチカラで取り上げた事業活動収支計算書と似ていますが、分類の仕方が異なっています。
2.活動区分資金収支計算書の分類について
(1)教育活動による資金収支
「教育活動による資金収支」は、「施設整備等活動による資金収支」及び「その他の活動による資金収支」以外の活動をいいます(施設整備等活動による資金収支については、下記(2)、その他の活動による資金収支については下記(3)参照)。
そのため、3つの区分を考えるときは、先に「施設整備等活動による資金収支」と「その他の活動による資金収支」に該当するかどうかを考慮して、いずれにも該当しない場合は「教育活動による資金収支」に区分することになると考えると効率的です。
以下に「教育活動による資金収支」に区分する科目、計算式、留意事項を記載していますので、決算時の確認事項としてご利用ください。
(2)施設整備等活動による資金収支
この活動区分は、「施設若しくは設備の取得又は売却その他これらに類する活動」と定義付けられています。具体的に、以下の科目が該当します。
施設整備等活動による資金収支の区分は、施設設備に関連する科目を表示することになります。
なお、「施設整備等活動資金収支差額」の次に表示する「小計」は、「教育活動資金収支差額」と「施設整備等活動資金収支差額」の合計額を記載します。この数値は、言い換えると当年度の教育活動から生じた収支で当年度の施設設備資金をどの程度賄っているのかを示していると考えられ、学校経営上重要な意味をもっています。仮に、小計がプラスもしくは収支ゼロに近似している場合、借入による資金調達なしで施設設備に必要な資金を充当できていることを意味しており、当年度の財務は好ましいと判断できます。
一方、小計がマイナスの場合は、前年度の支払資金(余剰資金)から取り崩しが生じているとも考えられます(借入や有価証券取引等のその他の活動を除いて考えた場合)。そのため、今後の学校経営の状況や支払資金残高に応じて、資金調達を検討する必要があります。特に、小計のマイナスが過年度から継続している場合や年々マイナスが増えている場合は注意する必要があります。
(3)その他の活動による資金収支
最後に、「その他の活動による資金収支」について考えます。この活動区分は、「財務活動のほか、収益事業に係る活動、預り金の受け払い等の経過的な活動に係る資金収入及び資金支出、並びに過年度修正額をいう。」と定義付けられています。実務上は、借入や有価証券に関連する取引、収益事業を中心に表示することになります。
なお、活動区分資金収支計算書は、都道府県知事所轄の学校法人では作成しないことができますが、活動区分資金収支計算書は資金収支計算書を3つの活動に細分化しているため、内部管理用のための資料に活用できます。したがって、活動区分資金収支計算書の提出義務の有無にかかわらず、毎年度継続的に作成することをお勧めします。
【参考文献等】
・学校会計入門 (中央経済社、齋藤力夫)
・学校法人会計のすべて (税務経理協会、齋藤力夫)
公認会計士 佐藤 弘章