前回は、基本金の会計処理について、各号ごとに基本金の組入対象額と取崩対象額の全体を把握したうえで、最終的に基本金が組入額となるのか取崩額となるのか、そのながれを解説しました。基本金の計算は、法人全体で計算するケースのほか部門別に計算するケースもあり、さらに複雑なパターンもありますので、まずは基本的な処理を十分に理解しておくことが必要です。2か月にわたる基本金の解説の最後は、基本金の修正と基本金明細表、基本金に関する注記などについて解説したいと思います。なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておきます。
基本金の修正とは、過年度の基本金の計算に誤謬があった場合に正しい額に修正することをいいます。この場合、修正に伴う基本金の増減額は、修正を行う年度において基本金の組入対象額又は取崩対象額に含められます。したがって、過年度に基本金の過大計上があった場合には当該修正額を取崩対象額に含め、また、過小計上があった場合には当該修正額を組入対象額に含めて把握します。その後は、前回解説した手順により最終的に事業活動収支計算書において、基本金が組入額となるのか取崩額となるのか算定されることになります。
基本金明細表は、各号の基本金について、当期組入高や当期取崩高の状況や組入れ及び取崩しの原因となる事実を明らかにするために作成する明細表であり、固定資産明細表及び借入金明細表とともに学校法人会計基準(以下、基準といいます。)において作成することが求められている明細表です。ただし、都道府県知事を所轄庁とする学校法人(高等学校を設置する学校法人を除く。)は基本金明細表の作成を省略することが出来ます。
第36条 固定資産明細表、借入金明細表及び基本金明細表には、当該会計年度における固定資産、借入金及び基本金の増減の状況、事由等をそれぞれ第八号様式、第九号様式、第十号様式に従って記載するものとする。
基本金明細表は、当期組入高や当期取崩高ついては、組入れ及び取崩しの原因となる事実(例えば、○○学科校舎増築に係る組入高)ごとに記載します。ただし、第3号基本金以外の基本金については、当期組入れの原因となる事実に係る金額の合計額が各号別の前期繰越高の1/100 に相当する金額(その金額が3,000 万円を超える場合には3,000 万円)を超えない場合には、資産の種類等(例えば、建物建設に伴う組入高や教育研究機器備品で当期取得高等)により一括して記載することができます。
また、要組入高の欄には、第1号基本金にあっては取得した固定資産の価額に相当する金額を、第4号基本金にあっては、基準第30条第1項第4号の規定により文部科学大臣が定めた額を記載します。そのため、基本金明細表において、第1号基本金の要組入高の当期末残高については、遊休資産等で基本金の対象から除外している固定資産や翌年度繰延高がないと仮定した場合、固定資産明細表の有形固定資産の計(下図の×××の金額)とその他固定資産のうち、借地権や電話加入権、施設利用権、ソフトウェア等で第1号基本金の組入れ対象資産としている資産を合計した金額と一致します。
なお、基本金明細表の付表として、
- 様式一の一(第2号基本金の組入れに係る計画集計表)
- 様式一の二(第2号基本金の組入れに係る計画表)
- 様式二の一(第3号基本金の組入れに係る計画集計表)
- 様式二の二(第3号基本金の組入れに係る計画表)
- 様式二の三(第3号基本金の組入れに係る計画表)
がある場合には、袋とじの対象とします
基本金の注記は、基準の改正前より、翌会計年度以後の会計年度において基本金の組入れを行うこととなる金額(いわゆる、基本金の未組入額)を記載していましたが、基準の改正後は、さらに当該会計年度の末日において第4号基本金に相当する資金を有していない場合のその旨と対策を新たに記載することになりました。これは、近年、学校経営の悪化により資金不足に陥った場合、学校法人の継続性に関する重要な情報として、利害関係者に発信することを目的としています。
なお、「第4号基本金に相当する資金」とは、現金預金及びこれに類する金融商品とします。この場合、現金預金とは貸借対照表上の現金預金であり、これに類する金融商品とは、他の金融商品の決済手段として用いられるなど、支払資金としての機能をもっており、かつ、当該金融商品を支払資金と同様に用いている金融商品をいい、第4号基本金に対応する名称を付した特定資産を含み、その他の特定資産は含めない点にご留意ください。
(公認会計士 芦澤 宗孝)