前回は、第2号基本金について、その概要を解説しました。第2号基本金は、第1号基本金の先行組入れとして、取得年度に先行して年次的、段階的に基本金の組入れを行うことにより基本金の組入れの平準化を図ること、また、必要な資金をあらかじめ確保しておくことを目的に設定される基本金であることがお分かり頂けたと思います。それでは、今週は第3号基本金について解説します。なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておきます。
第3号基本金の組入れ対象資産は、学校法人会計基準(以下、基準といいます。)第30条第1項第3号に以下のとおり定められています。
第30条第1項第3号 基金として継続的に保持し、かつ、運用する金銭その他の資産の額
基金とは、その元本は使わず、元本から生じる利息や配当金等の果実を、目的とする教育研究事業に使用するために保有する資産です。第3号基本金の対象となる資産には、寄付者の意思又は学校法人独自で設定した奨学基金、研究基金、海外交流基金等が該当し、基金の事業目的ごとに運用規程等を策定します。これらの資産が、基本金の対象とされるのは、この基金が寄付者又は学校法人の意思によって、元本は保持され、継続的に特定の事業目的のために基金の運用果実をもって運用されなければならないからです。
この点、各年度の事業活動収支の差額いかんによって第3号基本金の組入額を調整したり、資金に余裕があるからといって具体的な計画がないにもかかわらず、第3号基本金の組入れを行うことができれば、当年度収支差額を操作することが可能となります。したがって、第2号基本金と同様に第3号基本金の組入れにあたっても、慎重かつ厳格な手続きが求められ、決算操作を防ぐ意味合いからも、基準は以下のとおり、第30条第2項において第3号基本金の計画的な組入れを定めています。
第30条第2項 前項第2号及び第3号に規定する基本金への組入れは、固定資産の取得又は基金の設定に係る基本金組入計画に従い行うものとする。
第3号基本金の設定は、基金の目的を明らかにした上で計画的に行わなければならず、理事会(評議員会が決議機関である場合には評議員会を含む。)の決議が必要です。また、正規の決定機関は、長期的な資金計画に基づく適正規模の計画であるかどうか、学校法人財政の健全性、又は学生に係る修学上の経済的負担の軽減の観点も検討し、諸活動の計画を図ることも必要です。なお、理事会のみが決定の権限を有する場合であっても、将来の継続的予算措置にかかる事柄であるので、決定に先立ち、あらかじめ評議員会の意見を聞いておくことが望ましいと考えられます。なお、基金から生じた受取利息や受取配当金は、一般の受取利息・配当金と区別し、会計上「第3号基本金引当特定資産運用収入」の科目で計上するため、基金は、会計上「第3号基本金引当特定資産」として区分掲記し、他の資産と明確に区別して管理する点にご留意ください。
第3号基本金の組入れに係る計画表(様式第二の二・様式第二の三)
Q
2年前に特別寄付金により奨学基金が発足した。
基金の規模が小さいこともあり、今後の奨学事業の拡大を考えると、改めて学校法人として自己財源をもって奨学基金の総額を積み増しすることとしたい。既に特別寄付金による奨学基金が発足していることから、第十号様式(基本金明細表)の付表として作成される「第3号基本金の組入れに係る計画表」は、そのまま様式第二の三を用いることでよいのか。
(学校法人の経営に関する実務問答集 改正会計基準対応版日本私立学校振興共済事業団 私学経営情報センターより抜粋)
A
様式第二の三の作成の要件は運用果実の事業への使用残額又は学校法人の募集によらない特別寄付金を引き続き基本金へ組み入れていく場合のみである。質問の場合は,学校法人が改めて奨学事業の拡大をはかるため基本金組入計画の変更である。したがって,このような場合は様式第二の三によるのではなく様式第二の二によることとなる。なお,計画変更にあたっては理事会等の決定が必要であることはいうまでもない。
(公認会計士 芦澤 宗孝)