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学校会計のチカラ
基本金について 4

前回は、第1号基本金について、その概要を解説しました。第1号基本金は、他の基本金に比べ論点も多く、1回で完全に理解することは難しい科目ではありますが、まずは要組入高や組入高、未組入高など大まかな概念をご理解頂けたのではないでしょうか。今週は第2号基本金について解説します。第2号基本金は、第1号基本金の先行組入れとして、第1号基本金と密接に関連していますので、第1号基本金の組入高とあわせて理解することが重要です。なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておきます。

第2号基本金の組入れ対象資産は、学校法人会計基準(以下、基準といいます。)第30条第1項第2号に以下のとおり定められています。
第30条第1項第2号 学校法人が新たな学校の設置又は既設の学校の規模の拡大若しくは教育の充実向上のために将来取得する固定資産の取得に充てる金銭その他の資産の額

したがって、第2号基本金の組入対象資産は

  1. 学校法人が新たな学校の設置のために将来取得する固定資産の取得に充てる金銭等
  2. 学校法人が既設の学校の規模の拡大のために将来取得する固定資産の取得に充てる金銭
  3. 学校法人が既設の学校の教育の充実のために将来取得する固定資産の取得に充てる金銭等

となります。

第2号基本金は、将来において第1号基本金対象資産の取得源資となることが計画されているため、基本金となるものです。すなわち、将来第1号基本金の対象となるべき固定資産の取得財源となる資金の額は、当該固定資産の取得前であっても第2号基本金として組入れしようということです。将来校舎の新築や校地の取得など多額の資金を要するものは、当該資産を取得した期に一度に第1号基本金の組入れを行うと、組入れを行った会計年度の当年度収支差額が大幅なマイナスになり、事業活動収支の均衡の状態を乱す原因になります。また、将来校舎の新築や校地の取得など多額の資金を要する計画が予定されるときには、必要な資金を確保することは財政計画上からも望まれます。したがって、基準は、持続的な事業活動収支の均衡を図る観点から、将来高額な固定資産を取得しようとする場合は、取得年度に第1号基本金の組入れが集中することがないよう、早めに第2号基本金の組入計画を策定し、取得年度に先行して年次的、段階的に基本金の組入れを行うことにより基本金の組入れの平準化を図ることを求めています。

この点、各年度の事業活動収支の差額いかんによって第2号基本金の組入額を調整したり、資金に余裕があるからといって具体的な計画がないにもかかわらず、第2号基本金の組入れを行うことができれば、当年度収支差額を操作することが可能となります。したがって、第2号基本金の組入れにあたっては、慎重かつ厳格な手続きが求められ、決算操作を防ぐ意味合いからも、基準は以下のとおり、第30条第2項において第2号基本金の計画的な組入れを定めています。

第30条第2項 前項第2号及び第3号に規定する基本金への組入れは、固定資産の取得又は基金の設定に係る基本金組入計画に従い行うものとする。

第2号基本金の設定は、固定資産の取得計画の目的を明らかにした上で計画的に行わなければならず、理事会(評議員会が決議機関である場合には評議員会を含む。)の決議が必要となります。また、理事会等では、長期的な資金計画に基づく適正規模の計画であるかどうか、学校法人財政の健全性又は学生に係る修学上の経済的負担の軽減の観点も検討し、計画を策定することが必要です。なお、理事会のみが決定の権限を有する場合であっても、将来の継続的な予算措置にかかる事柄であるため、決定に先立ち、あらかじめ評議員会の意見を聞いておくことが望ましいと考えられます。


Q
校舎を新築するにあたり、第2号基本金を設定する計画を検討しています。建築費用は10億円程度を見込んでいますが、全額借入金で調達する予定です(元本は20年間で均等返済)。第2号基本金の計画は、どのようになるでしょうか?
A

第2号基本金は、将来第1号基本金の対象となるべき固定資産の取得財源となる資金の額を当該固定資産の取得前であっても基本金として組入れしようとする趣旨です。したがって、校舎新築に係る資金の源泉が全額借入金で調達される場合には、第2号基本金は不要と考えられます。したがって、第1号基本金は、借入金を返済する20年間で組み入れられることとなります。


Q
第2号基本金を組み入れられる時期はいつまででしょうか?
A

第1号基本金対象資産の取得年次の前年度まで、第2号基本金を組入れることが可能です。


Q
学生寮を建て替えましたが、以下の場合には未組入高はいくらになるでしょうか?
学生寮新築代 1,500
(内訳) 第2号基本金に係る自己資金 300
上記以外の自己資金 1,000
借入金 200
除却した旧校舎に係る基本金 900
(未組入高はないものとする。)
A

新学生寮に係る基本金要組入額1,500-除却した旧学生寮に係る第1号基本金既組入額
900-第2号基本金からの振替額300=要組入高300

新学生寮の基本金で既に組み入れられている金額は、除却した旧学生寮に係る基本金組入額900と第2号基本金として組み入れられている300(第1号基本金に振り替えられる。)であり、差引した300が組み入れられていません。したがって、借入金が200ありますので、未組入額は200となり、組入高は100=300-200となります。この場合、取替更新に伴う差額は600(1,500-900)となり、借入金に係る未組入額が200であるため、第1号基本金の組入高が400となると思われるかもしれませんが、先行組入れによって第2号基本金が既に300組み入れられているため、400-300=100が当期の組入高になる点にご注意ください。

(公認会計士 芦澤 宗孝)


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