今回は、学校法人における預り金について検討しましょう。なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておきます。
昨年、大阪府内の学校法人において、教育研究に直接必要な経費として保護者から徴収した模擬試験の受験料や教材料等について、学校法人の規定に反して学校法人会計の簿外で経理するなど、不適切な会計処理を行っていたことが明らかになりました。このため、文部科学省では、所轄の各学校法人理事長宛てに、「学校法人における寄付金等及び教材料等の取扱いの適正確保について」(平成27年3月31日 高私参第9号文部科学省高等教育局私学部参事官通知 以下「通知」といいます。)を発出しました。また、各都道府県知事からも所轄の各学校法人あてに同様の通知を行っています。
通知によれば、学校法人が保護者等関係者から教育研究に直接必要な経費に充てるために受け入れた寄付金及び保護者等から徴収している教材料等について、すべて学校法人が直接処理し、学校法人会計の外で経理することなどがないよう要請されています。これは、「私立大学における入学者選抜の公正確保等について」(平成14年10月1日 文科高第454号文部科学事務次官通知)の中でも、5.経理の適正処理と財務状況の公開として、「各学校法人は、その受け入れた寄附金等を学校法人会計の外で、経理することなどのないよう、真実な内容をもれなく、明瞭に財務計算に関する書類に表示するとともに、内部監査機能を強化するなど経理の適正を期すること。」とされており、通知は今回の不祥事を受けて改めて各学校法人に要請されたものと考えられます。
したがって、学校法人においては保護者等関係者から教育研究に直接必要な経費に充てるために受け入れた寄付金及び保護者等から徴収している教材料等について、すべて学校法人が直接処理することが必要です。また、入学者又はその保護者等関係者から大学等の教育研究に直接必要な経費に充てられるために寄附金又は学校債を募集する場合は、後援会等によらず、すべて学校法人が直接処理します。なお、保護者等から預かった教材費等に余剰が生じた場合には、翌期の教材費等に充当するか、返還するなど適切な処理が望まれます。
歴史が長い学校や組織再編があった学校等においては、何らかの理由により学校法人会計外に現金預金があったり、また、学校法人会計内にあっても長期間まったく動きのない預り(預)金がある場合も少なくありません。しかも、学校の経理担当者でもその理由を承知していない場合もあります。一般的に簿外の預金は、流用の危険があるため、不正防止の観点からも内部監査時等に定期的に金庫内の棚卸を行い、学校法人会計外に現金預金がないかどうか確かめることが良いでしょう。また、長期間まったく動きのない預り(預)金については、今後の支出計画を検討し、返還や学校への寄付を行うなど適切な対応を行うことが望まれます。
(公認会計士 芦澤 宗孝)