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学校会計のチカラ
寄付金のポイント(1)

12月の学校会計のチカラは、寄付金と補助金について考えていきます。前半の2回は寄付金です。

1.寄付金の意義

寄付は善意に基づく寄付者が財産を無償で拠出する行為であり、反対給付を伴わないため、贈与の性質を有しています。寄付者からの一方的な給付であるため、寄付者から財産が提供されたときに寄付が成立します。

学校会計における寄付金収入とは、「金銭その他の資産を寄贈者から贈与されたもので、補助金収入とならないもの」をいい(学校法人委員会実務指針第39号)、学校法人は無償で財産を譲り受けることができるため、重要な財源となります。寄付金は、入学者又はその関係者から収受するもののほか、他の者(例えば、卒業生や企業)から収受するものも含まれます。

2.寄付金の取扱い

過去、一部の私立大学入学に関する寄付金の収受が原因で公正な選抜に疑似を招く事態が生じたことや不適切な会計処理が発覚したことがあり、社会問題化しました。そこで、文部科学省では公正確保の観点から、各私立大学宛の通知(14文科高第454号)を発して寄付に関する厳正な取扱いを求めています。
これらの趣旨を踏まえて、実務上は寄付金の取扱いには慎重な対応が必要です。特に、入学前の寄付の受領は注意を要します。以下は通知の概要です。

① 入学に関する寄附金、学校債の収受等の禁止
学校法人及びその関係者は、当該学校法人が設置する私立大学への入学に関し、直接又は間接を問わず、寄附金又は学校債を収受し、又はこれらの募集若しくは約束を行わないこと。

② 経理の適正処理と財務状況の公開
各学校法人は、その受け入れた寄附金等を学校法人会計の外で経理することなどのないよう、真実な内容をもれなく、明瞭に財務計算に関する書類に表示するとともに、内部監査機能を強化するなど経理の適正を期すること。

③ 任意の寄附金、学校債の取扱い

  1. 寄附金又は学校債の募集開始時期は入学後とし、それ以前にあっては募集の予告にとどめること。
  2. 寄附金又は学校債を募集する場合は、学生募集要項において、応募が任意であること、入学前の募集は行っていないことなどを明記し、適切な実施に努めること。
  3. 入学者又はその保護者等関係者から寄附金又は学校債を募集する場合は、その額の抑制に努めること。
  4. 学校債については十分な返還の見通しをたてたうえで募集を行うものとし、学校債の引受者に対して寄附金への変換を引受け時に約束させ、又はその後においても特別の事由のある場合を除くほか変換を要請しないこと。
  5. 入学者又はその保護者等関係者から大学の教育研究に直接必要な経費に充てられるために寄附金又は学校債を募集する場合は、後援会等によらず、すべて学校法人が直接処理すること。
3.寄付金の会計処理の留意点

① 寄付金収入の帰属年度
寄付金収入は、原則として寄付金を受領した年度の収入として計上します。したがって、寄贈者が寄付の申込みを行っていても期末まで寄付金を受領していない場合、未収入金の計上は認められません。寄付者は寄付の申込み時点では債務を負担していないとも考えられるため、学校としても債権を有しているとはいえないからです。ただし、翌年度入学予定の学生生徒等に係る寄付金について、入学年度開始前に受領したときに限って、受領した年度の寄付金前受金収入として計上します。

なお、翌年度入学予定の学生からの寄付金は、上記「2.寄付金の取扱い」の記載の通り、私立大学では入学前の寄付募集は禁止されていると解釈できるため、このような会計処理が生じることはありません。

② 学生生徒等納付金収入との区分
学則や募集要項等に所定の均等額を納入する旨の記載があるものは、学生生徒等納付金収入となりますが、募集要項等に協力金の名目で記載があり、1口10万円等の納入を要請する旨の記載がある場合は寄付金収入となります。

③ 補助金収入との区別
補助金収入については、12月の学校会計のチカラで詳細に取り上げますが、寄付金収入と補助金収入は共に金銭その他の資産を寄贈者から贈与される点では共通です。しかし、補助金収入は、国又は地方公共団体及びこれに準ずる団体からの助成金(日本私立学校振興・共済事業団からの補助金を含む)をいい、これ以外は寄付金収入に含まれます。

④ 雑収入との区別
寄付金収入は、寄贈者の任意行為として自発的に寄贈されたものであるのに対して、○○周年記念事業やその他の各種行事の際に受け入れる祝い金等の収入は、社会慣行としての交際費の性格を有すると考えられるため雑収入で処理される点で異なります。

⑤ 現物寄付
学校法人会計基準第25条では、「資産の取得のために通常要する価額と比較して著しく低い価額で取得した資産又は贈与された資産の評価は、取得又は贈与の時における当該資産の取得のために通常要する価額をもつてするものとする。」と規定されています。金銭以外の資産の贈与又は著しく低い価額で取得した場合の受贈分は、現物寄付として処理します。

【仕訳例】
寄付者から1,000,000円の現金、600,000円の備品、500,000円の消耗品を受領した。この場合の会計処理は以下の通りである。

(単位:円)

借方科目金額貸方科目金額
現金預金1,000,000寄付金収入1,000,000
教育研究用機器備品600,000現物寄付600,000
消耗品費500,000現物寄付500,000

⑥ 後援会等の外郭団体からの寄付金
近年、学校法人の活動に密接に関係する後援会等の外郭団体を利用した不正事例が見受けられますが、文部科学省では学校法人で受け入れた寄付金は外郭団体で経理せず、学校法人会計基準に基づいて経理することを求めています。
外郭団体の活動は、学校法人に一定の管理責任が問われる可能性があるため、仮に外郭団体を利用した寄付が行われている場合は、特段の注意が必要です。

⑦ 参考事項の記載
寄付金の受領にあたり、文部科学省の通知等に反する場合、たとえば、文部科学大臣所轄学校法人で上記、「2.寄付金の取扱い」に反する場合や後援会等からの寄付に関する監査資料が入手できない場合は、公認会計士又は監査法人の監査報告書において、「参考事項」として記載することになります。寄付金の会計処理は適正に行うことが求められます。

(公認会計士 佐藤 弘章)


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