今月は学校法人の決算について解説していきます。第1回目は、学校法人が毎会計年度作成する計算書類に関する法令を確認し、その後、個別の決算事項のうち主に流動資産に計上される項目について説明していきます。
1.学校法人の決算
学校法人は、毎会計年度終了後2ヶ月以内に、財産目録、貸借対照表、収支計算書及び事業報告書を作成しなければなりません(私立学校法第47条第1項)。また理事長は、毎会計年度終了後2ヶ月以内に、決算及び事業の実績を評議員会に報告し、その意見を求めることとされています。(同法第46条)。
学校法人が私立学校振興助成法第4条第1項又は第9条に規定されている補助金の交付を受ける場合には、その金額が少額の場合を除き、文部科学大臣の定める基準、すなわち学校法人会計基準に従い、財務に関する書類を作成しなければなりません(同法第14条第1項)。学校法人会計基準第4条では、学校法人は以下の計算書類を作成するものとされています。
① 資金収支計算書
附属する内訳表(資金収支内訳表、人件費支出内訳表)
活動区分資金収支計算書
② 事業活動収支計算書
附属する内訳表(事業活動収支内訳表)
③ 貸借対照表
附属する明細表(固定資産明細表、借入金明細表、基本金明細表)
また、計算書類の作成に関する重要な会計方針等は、計算書類の末尾に記載するものとされています(同第34条第1項)。
2.個別の決算事項
(1)現金預金
学校法人会計基準第6条では、支払資金を現金及びいつでも引き出すことができる預貯金と規定しています。資金収支計算書の前年度繰越支払資金及び翌年度繰越支払資金の金額は、期首及び期末の貸借対照表における現金預金有高と一致する(「平成27年度以後の監査事項の指定について(通知)(平成27年3月30日 26文科高第1120号)」ことになりますので、現金預金には支払資金の金額が計上されることになります。
(2)未収入金
学生生徒等納付金の未納額や国、都道府県等からの補助金の未収金額を計上します。
退職金団体に加入している学校法人で、会計年度末で退職する教職員へ支給するために交付される退職資金交付金等については、その交付が見込まれるものであるため未収入金に計上します。
(3)徴収不能引当金
学校法人会計基準第28条では、「金銭債権については、徴収不能のおそれがある場合には、当該徴収不能の見込額を徴収不能引当金に繰り入れるものとする」とされています。徴収不能と見込まれる金額は、過去の徴収不能の実績により見積る方法や個別に徴収不能見込額を見積ることにより算定します。
未収入金や貸付金に対して徴収不能引当金を繰り入れたときは、貸借対照表上、徴収不能引当金を控除した後の残額で計上し(同第34条第4項)、計算書類の注記において徴収不能引当金の計上額を記載します。また、長期貸付金に対して徴収不能引当金を繰り入れたときは、固定資産明細表の「減価償却額の累計額」欄に徴収不能引当金の計上額を記載します。
なお、高等学校を設置する場合を除き、知事所轄学校法人では徴収不能の見込額を徴収不能引当金に繰り入れないことができるものとされています(同第38条)。
(4)貯蔵品
貯蔵品は会計年度末に棚卸しを行い、その数量に基づいて計上額を計算します。
また、「小規模法人における会計処理等の簡略化について(報告)について」(通知)(昭和49年3月29日 文管振第87号)」では、知事所轄学校法人を対象として、販売用文具品、制服等について、会計年度末の有高が多額である場合を除き、物品等を購入した会計年度において事業活動支出として処理できるものとされています。
(5)有価証券
① 有価証券の期末評価
学校法人会計基準第27条では、「有価証券については、第25条の規定により評価した価額と比較してその時価が著しく低くなった場合には、その回復が可能と認められるときを除き、時価によって評価するもの」とされています。市場価格がある有価証券については市場価格を時価とし、市場価格のない有価証券のうち債券等については取引金融機関において合理的に算定された価額を時価とするものとされています(「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)(平成25年9月2日 25高私参第8号)」Ⅱ.2)。これらの時価が取得価額と比べて50%以上下落したときは、特に合理的な理由が示されない限り、時価が取得価額まで回復可能と認められないものとされています。
また、市場価格のない有価証券のうち株式については、発行会社の実質価額(一株あたり純資産額)を時価とみなし、取得価額に比べ50%以上下落したときは、十分な証拠によって裏付けられない限り、回復が可能とは認められないものとされています。
永和監査法人
公認会計士 大島隆光