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学校会計のチカラ
計算書類の注記 4

前回までは重要な会計方針や改正後の学校法人会計基準で追加等された注記事項について説明しました。今回は、「その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項」について説明していきます。

1.その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項

(1)デリバティブ取引
学校法人会計では、デリバティブ取引を行っていても価格変動等による損失が確定しているか、または確定が見込まれる場合を除いて、契約上の決済時まで会計処理が行われませんが、多額の含み損益が発生している可能性があります。そのため、デリバティブ取引の契約金額や決済金額に重要性があるときには、会計年度末において時価の変動による影響額を把握するための注記が必要になります。
デリバティブ取引の注記事項は、取引の対象物、種類、当年度末の契約額等、契約額等のうち1年超の金額、その時価及び評価損益です。

(2)学校法人の出資による会社に係る事項
「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)(平成17年5月13日 17高私参第1号)」では、学校法人の出資割合が2分の1以上の会社がある場合には、学校法人の出資による会社に係る事項を記載することとしています。
具体的には、名称及び事業内容、資本金又は出資金の額、学校法人の出資金額等及び当該会社の総株式等に占める割合並びに当該株式等の入手日、当期中に学校法人が当該会社から受け入れた配当及び寄付の金額並びにその他の取引の額、当該会社の債務に係る保証債務を記載します。

(3)偶発債務
偶発債務は、将来において学校法人の負担となる可能性のあるものをいい、将来債務を負う又は損害を被る可能性が年度末日において存在しているため、記載することが必要となります。具体的には、在学生等が奨学ローンを受けるにあたり学校法人が債務を保証している場合や訴訟事件により損害賠償請求を受けている場合などが該当します。

(4)関連当事者との取引
学校法人が関連当事者と取引を行う場合、合理性を欠いた取引となるおそれがあることから計算書類に注記することが求められています。関連当事者とは、一方の法人の役員等が他方の法人の意思決定機関の構成員の過半数を占めている等の関係法人や当該学校法人の役員及びその近親者等をいいます。
具体的な注記事項は、会社等の名称または氏名、資本金等、学校法人の有する議決権割合等、関連当事者との関係、取引の内容、種類ごとの取引金額、取引条件等、期末時点の科目別の残高等です。

(5)後発事象
後発事象とは会計年度末日の翌日から監査報告書日までの間に発生した会計事象で、学校法人の財政及び経営の状況に影響を及ぼすものをいいます。後発事象には修正後発事象と開示後発事象があります。
後発事象のうち、会計年度末日後に発生し、当該会計年度の計算書類には影響を及ぼさないが、次年度以降の計算書類に影響を及ぼす事象を開示後発事象といいます。重要な開示後発事象については、学校法人の財政及び経営の状況に関する的確な判断に資するため、計算書類に注記することが求められます。

(6)その他の注記項目
日本公認会計士協会が公表している「計算書類の注記事項の記載に関するQ&A(学校法人委員会研究報告第16号)」では、「その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項」として以下の注記を例示しています。

①その他の重要な会計方針

  • 減価償却の方法等
    学校法人会計基準第26条第2項では、減価償却の方法は定額法によることが定められています。一方で、減価償却額の計算を行うときの他の構成要素である耐用年数や残存価額は明確に定められていません。学校法人は自主的に耐用年数を決定するほか、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(財務省令)による場合、又は「学校法人の減価償却に関する監査上の取扱い(学校法人委員会報告第28号)」に掲げる「固定資産耐用年数表」によることも妥当な処理として認められています。したがって、耐用年数等の相違により事業活動収支計算に影響を及ぼすと判断されるときには、減価償却の方法を注記することが望ましいとされています。
    また、学校法人会計基準では減価償却資産の計上基準が定められておらず、各都道府県において計上基準を定めている場合でも、その金額は区々の状況です。そこで、減価償却資産の計上基準を注記することが考えられます。

②その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項

  • 退職年金制度
    退職給与引当金に記載した退職金制度とは別に退職年金制度に加入している場合には、その制度の概要、年金資産額、退職給付債務の額等を注記することが考えられます。

永和監査法人
公認会計士 大島隆光


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