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学校会計のチカラ
科研費(2)

10月第2週目の学校会計のチカラは、科研費の管理と直接経費の取り扱いについて考えていきます。

1.科研費の管理

科研費は、採択された研究課題の研究を行うために支出するものであり、この目的のために幅広く使用することができます。
しかし、自由裁量が広くなると、研究者の個人的な判断によるルールに反した科研費の使用や不正が生じる可能性があります。これに対応するため、科研費の用途に関するルールを設け、厳正に管理する必要があるのです。
科研費は、専用口座を開設して、これを継続的に管理することが求められています。口座数については、特段の決まりはなく、複数の口座で管理しても1つの口座に集約しても問題ありませんが、科研費のルールに則って管理することができる場合に限ります。
また、間接経費の管理は、間接経費専用の口座開設や個々の研究課題別に管理する必要はありません。ただし、間接経費は、科研費交付後に研究機関へ譲渡することになっているため、その後は直接経費とは切り離して、管理する必要があります。
研究機関では、間接経費の使用に関する方針等を掲げ、使途を透明化することが大切です。なお、使用実績は府省共通研究開発管理システム(e-Rad)により報告する必要があります.

2.科研費の直接経費

直接経費は、補助事業である研究課題の遂行に必要な経費(①物品購入費、②旅費、③人件費・謝金、④その他の経費)をいい、幅広く使用することができます。経費の財源は、税金等であるため、研究機関は4つの費目ごとに収支帳簿を用意して、研究代表者及び研究分担者が適時把握できるように管理する必要があります。
また、直接経費は研究課題の遂行に必要な経費として広く使用することができますが、研究代表者や研究分担者は、その経費使用に関する判断や使途に関する説明責任を負っています。研究費の使用にあたっては、直接経費から支出することが社会通念に照らし妥当であるのか、直接経費の使用の優先度として適当であるのか、といった点を考慮する必要があります。

以下、直接経費として支出できる具体例を記載しますので、参考にしてください。

費目 内容・留意事項
①物品費 設備費、備品費等は研究機関に現物寄付することになる。
②旅費 国内外の研究代表者、研究分担者、連携研究者、研究協力者の出張(資料収集、各種調査、研究打ち合わせ、情報収集、研究成果の発表等)のための経費(交通費、宿泊費、日当、雑費)、招聘費用
③人件費・謝金 研究への協力(資料整理、実験補助、翻訳・校閲、専門的知識の提供、アンケートの配付・回収、研究資料収集等)をする者に係る謝金、報酬、アルバイト賃金、給与の支払のための経費等
④その他の経費
印刷費、複写費、文献複写費、現像・焼付費、通信費、郵送料、運搬費、研究実施場所借り上げ費、会議費(会場借料、食事(アルコール類を除く)費用等)、レンタル費用、機器修理費用、検査費用、パンフレット作成費用等)、実験廃棄物処理費用、旅費以外の交通費、研究成果発表費用(学会誌投稿料)、ホームページ作成費、業務請負費・委託費、学会参加費など当該研究を遂行するための経費

以下の内容は、直接経費の支出に関する留意事項の例を記載しています。実務の参考にしてください(科研費ガイドブックより抜粋)。

費用 内容 備考
人件費・謝金 研究協力者を雇用するための経費 研究代表者及び研究分担者以外の者で、研究実施のため特別に雇用する研究者を含む。ただし、研究代表者が雇用するのではなく、研究機関として雇用すること(雇用にあたっては、給与の二重払いや研究代表者や研究分担者に誤って支払うことがないように注意)。
旅費もしくはその他の経費 海外出張に係る海外旅行傷害保険料 契約金額が適正な掛け金となっているかなど、過度に高額な支出とならないように留意する。
その他の経費 研究実施場所を借り上げるための経費
研究機関施設で研究できない場合(賃借料、敷金等)や研究機関内のスペースチャージなどにも使用できる。
科研費の研究で使用する設備等の修理費 研究課題の遂行のために必要な場合、科研費以外の経費で購入した設備の修理にも使用できる。
研究の実施に直接使用した設備、装置等に要した光熱水費
科研費の研究に直接必要な設備、装置等に専用のメーターが装備されているなど算出根拠が明確な場合に限る
研究を実施することにより生じた廃棄物の処理に係る経費 研究実施のために必要となった薬品等の処理に係る経費などにも使用できる。
シンポジウムなどを開催するときの食事費用
アルコール飲料類は使用できない。
海外での国際学会への参加費 学会参加費とランチ代・バンケット代が不可分な場合、学会活動の一環として必要な経費として支出できる。
3.直接経費の会計処理

科学研究費補助金は、研究代表者や研究分担者に交付されることになるため、学校法人に帰属する収入とはならず、「預り金」として会計処理します。

<仕訳例>

科研費(直接経費)100万円の入金があった。

(借方)支払資金 1,000,000 (貸方)預り金受入収入 1,000,000

上記100万円のうち、70万円を支出した(残り30万円は年度内に支出)。

(借方)預り金支払支出 700,000 (貸方)支払資金 700,000

【参考文献等】

  • 科研費ハンドブック2017年度版(文部科学省研究振興局、独立行政法人日本学術振興会)
  • 科研費FAQ H28.8版(独立行政法人日本学術振興会)
  • 学校法人会計のすべて(齋藤力夫、税務経理協会)

永和監査法人
公認会計士   佐藤弘章


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