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学校会計のチカラ
科研費(1)

10月の学校会計のチカラは、科研費(文部科学省の科学研究費)について考えていきます。第1週目は科研費の概要と今後の動向を取り上げます。

1.科研費の意義

科研費は、大学や研究機関等で行う研究活動に必要な資金を研究者に対して助成するために制度化されたものです。
助成の範囲は、人文学、社会科学から自然科学までのすべての分野にわたっており、基礎研究から応用までのあらゆる独創的・先駆的な学術研究(研究者の自由な発想に基づく研究)を対象としています。
研究活動の対象は、研究者が比較的自由に行うことができるものをはじめ、予め重点的に取り組む分野や目標を定めて行われるプロジェクトに対するもの、具体的な製品開発に結びつけるためのものなど様々な制度があります。
科研費の特徴の1つとして、研究者の自由な発想と自発的な意思に基づいて行われる学術研究であることがあげられます。研究者の情熱に応えることができるとともに、科学の発展に寄与する研究成果が期待されています。
その反面、科研費は税金等を原資にしているため、文部科学省及び日本学術振興会の定めるルールに基づいて運用を行い、そして情報開示の制度で実効性を確保しています。
また、質の高い研究課題を選定するための施策として、研究者による審査(ピアレビュー)があります。審査は、専門分野に近い複数の研究者が行うことになっており、複数回を経て決定することになります。審査委員の候補者は、データベース化しており、選定委員会で決定します。審査の方針や不採択になったときの審査結果は開示しており、公平性を担保しています。
このように、科研費は日本の学術研究を支え、科学技術の進展を後押しするうえで大きな役割を担っていると考えられます。

2.科研費の応募資格

上記のとおり、科研費は国民の税金等を原資にしているため、応募資格については厳正なルール化が図られています。具体的な内容は、公募要領に記載されていますが、ここでは、以下に応募資格に関する2要件の概要を示しますので、参考にしてください。

(1)応募時点において、研究機関に所属し、次の要件をすべて満たしていること。

研究機関に、当該研究機関の研究活動を行うことを業務に含む者として、所属する者(有給・無給・常勤・非常勤、フルタイム・パートタイムの別の問わない。また、研究活動そのものを主たる職務とすることを要しない。)であること
当該研究機関の研究活動に実際に従事していること(研究の補助のみに従事している場合は除く。)
大学院生等の学生でないこと(ただし、所属する研究機関において研究活動を行うことを本務とする職に就いている者(例:大学教員や企業等の研究者など)で、学生の身分も有する場合を除く。)

(2)科研費やそれ以外の競争的資金で、不正使用、不正受給又は不正行為を行ったとして、その年度に「交付の対象としないこと」とされていないこと。

3.科研費の申し込み

科研費は、研究費の継続的な使用と予測ができるように、年初(4月)に交付内定を行います。公募の開始は、前年度の9月であり、その後審査があります。また、前年度の9月の応募時期に応募できなかった場合に備えた制度も用意しています。
科研費の応募は、府省共通研究開発管理システム(e-Rad)を通じて行いますが、研究者情報の登録が必要です。
平成30年度における科研費公募スケジュールについては、「平成30年度科学研究費助成事業-科研費-の公募について(通知)」(学振助企第52号、平成29年9月1日)を参照してください。

4.科研費の今後の動向

近年は、我が国における研究活動の相対的な低下について懸念の声があり、研究成果を持続的に生み出し続け、国際的な存在感を高めていくことが課題となっています。そこで、文部科学省では審議を通じて、科研費の審査システム改革や研究種目の見直し等の方針を掲げ、平成30年度助成から新しい方式が導入されることになりました。
文部科学省からは、新しい審査システム概要と研究種目の新しい体系について、以下の内容が示されていますので、参考として掲載します。

新しい審査システム概要と研究種目の新しい体系

【参考文献等】

  • 科研費ハンドブック2017年度版(文部科学省研究振興局、独立行政法人日本学術振興会)
  • 科研費FAQ H28.8版(独立行政法人日本学術振興会)
  • 科学研究費助成事業の審査システム改革について(科学技術・学術審議会 学術分科会)
  • 科研費による挑戦的な研究に対する支援強化について(科学技術・学術審議会 学術分科会研究費部会)
  • 科研費改革の実施方針(文部科学省)
  • 学校法人会計のすべて(齋藤力夫、税務経理協会)

永和監査法人
公認会計士   佐藤弘章


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