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学校会計のチカラ
公認会計士監査と監事との連携  1

今月は学校法人にかかわる公認会計士監査と監事による会計監査等について解説していきます。
平成27年度の私立学校振興助成法に基づく監査から(知事所轄学校法人は平成28年度の監査から)公認会計士が作成する監査報告書の取扱いが改訂されています。初回では、改訂の契機となった監査基準の改訂と私立学校振興助成法に基づく監査について説明していきます。

1.私立学校と会計監査

私立学校法第38条第3項では、監事は財産の状況について監査を行い、監査報告書を作成し、理事会及び評議員会へ提出するものとされています。
一方、私立学校振興助成法では、学校法人が作成する貸借対照表、収支計算その他財務に関する書類を所轄庁に提出するときに、公認会計士による監査証明を付するものと定めています(私立学校振興助成法第14条第3項)。監査の対象は、文部科学省所轄学校法人については、「平成27年度以後の監査事項の指定について(通知)」(26文科高第1120号 平成27年3月30日)において、資金収支計算書、事業活動収支計算書、貸借対照表等と定められています。
また、学校法人を設立しようとする者が私立学校法第30条の規定により寄附行為の認可申請をする場合等に作成する財産目録についても、公認会計士の監査の結果を記載した書類を提出することが求められています(「学校法人の寄附行為等の認可申請に係る書類の様式等」(平成6年7月20日 文部省告示第117号))。

2.監査基準の改訂の経緯

日本公認会計士協会では、平成27年10月に学校法人に対して公認会計士が監査を実施する場合の監査報告書等の取扱いを改訂しています。これに先立ち平成26年2月に、金融庁の企業会計審議会において監査基準の改訂が行われており、今回の学校法人に対する監査上の取扱いの変更には、監査基準の改訂に伴う見直しが含まれています。そこでまず今回の監査基準の改訂の内容について簡単にご紹介します。
従来の監査基準では、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成された財務諸表に対して監査を行う場合を想定しており、企業会計の基準は幅広い利用者に共通するニーズを満たすために策定されていることを前提としていました。これに対して、今回の監査基準の改訂では、特定の利用者のニーズを満たすために特別の目的に適合した会計の基準に準拠して作成された財務諸表に対して監査を実施する場合の監査の基準が追加されました(なお、前者は「一般目的の財務諸表」、後者は「特別目的の財務諸表」と呼ばれます)。
特別目的の財務諸表は、一般目的の財務諸表と異なり利用目的が限定され、また、財務諸表の利用者が財政状態や経営成績等を理解するにあたって財務諸表が全体として適切に表示されるように追加的な開示を求める規定が会計の基準で定められていないこともあることから、公認会計士の監査意見として適正性に関する意見を表明することに馴染まない面があるとされています。
そこで、適正性に関する意見を表明する場合と同様に財務諸表に重要な虚偽表示がないかどうかの合理的な保証を得ることに変わりはないのですが、財務諸表の作成にあたり適用された会計の基準に準拠して作成しているかどうかについての意見を表明することができることとされました(これは「準拠性に関する意見」と呼ばれます)。
改訂後の監査基準に照らして、私立学校振興助成法に基づく監査と学校法人の寄附行為等の認可申請をするときに実施される財産目録監査の特徴をまとめると以下のとおりになります。

私学振興助成法に基づく監査 財産目録の監査
作成基準 学校法人会計基準 告示117号、「財産目録の作成に係る基本方針」
財務諸表の目的 一般目的の財務諸表 特別目的の財務諸表
監査意見 適正性に関する意見 準拠性に関する意見
3.私立学校振興助成法に基づく監査

日本公認会計士協会は、平成27年10月に公認会計士が私立学校振興助成法に基づく監査を行い監査報告書を発行する場合に取り扱いを改訂し、「私立学校振興助成法第14条第3項の規定に基づく監査(学校法人委員会報告書実務指針第36号)を公表しています。以下では、この実務指針にそって、私立学校振興助成法に基づく監査の概要について説明します。

(1)計算書類に適用される財務報告の枠組みについて

計算書類に適用される財務報告の枠組みは、学校法人が計算書類を作成し表示するときに採用する財務報告の枠組みであり学校法人会計基準等が該当します。学校法人会計基準は、文部省令として定められ、広く我が国の学校法人の会計実務に定着しています。また学校法人の計算書類の広範囲の利用者に共通するニーズを調整・反映するために、透明性のあるプロセスにより策定されており、「一般目的の財務報告の枠組み」とされています。
したがって、学校法人会計準に準拠して作成される「完全な一組の財務諸表」としての計算書類は、「一般目的の財務諸表」になります。また、追加開示の規定に則り、必要な事項が開示されていることから「適正表示の枠組み」となるとされています。

(公認会計士 大島 隆光)


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