今週も引き続き個別的収益事業について解説いたします。
(1)物品貸付業
学校法人等の収益事業に該当する物品貸付業には、通常の物品のほか、動物や植物の貸付業も含まれます。
物品の貸付けは、他の業種に付随して行われる場合には、物品貸付けに対する料金を収受していても物品貸付業には該当せず、たとえば、旅館におけるテレビ、麻雀等の遊具の貸付けは旅館業に含まれ、遊園地における貸ボート等は遊技所業に含まれます。(法基通15-1-16)
(2)運送業
運送業とは、自動車、船舶、航空機等の運輸交通手段を利用して、貨物または旅客の運搬をすることであり、さらに、貨物の集荷、運送の取次などを行う運送取扱業も含まれます。
また、運送業には、リフト・ロープウェイ等の索道事業が含まれますが、自動車道事業、運河業及びさん橋業は運送業には含まれません。(法基通15-1-25)
学校法人においてもっともよく行われる運送事業たるスクールバスの運行については、それが通園又は通学のための手段としてだけ利用されているならば、収益事業に該当しないものと考えます。
なお、運送業は、国土交通大臣の許可を必要とする事業でありますが、法人税法上での運送業とは、国土交通大臣の許可を受けているかどうかに関係なく、運送業に該当する事業を行っているかどうかによって判定します。
(参考) 幼稚園が行う各種事業の収益事業の判定(昭和58直法2-7)
事業内容 | 収益事業・非収益事業区分の判定 | 備考 |
1 絵本・ワークブックの頒布 | 非収益事業 | 法人税基本通達1-10((宗教法人、学校法人等の物品販売))の(2)の「教科書その他これに類する教材」の販売に該当し、非収益事業となる。 |
2 次のような物品の領布及びあっせん
(1)はさみ、のり、粘土、粘土板、へら等の工作道具 (2)自由画帳、クレヨン等の絵画製作用具及びノート、筆記用具等の文房具 (3)ハーモニカ、カスタネット等の楽器 (4)道具箱 (5)制服、制帽、スモック、体操着、上靴 |
収益事業。ただし、物品の頒布のうち原価(又は原価に所要の経費をプラスした程度の価格)によることが明らかなものは非収益事業 | 法人税基本通達15-1-10((宗教法人、学校法人等の物品販売))の(3)及び(4)により収益事業となるが、原価による物品の頒布は、非収益事業とすることができる。 |
3 園児のうち希望者を対象として行う音楽教室のための教室等の席貸し | 非収益事業 | 法人税法施行令第5条第1項第14号((席貸業))のかっこ書により非収益事業となる。 |
4 園児に対し課外授業として実施する音楽教室の開設 | 収益事業 | 法人税法施行令第5条第1項第30号((技芸教授業))により収益事業となる。 |
5 スクールバスの運行 | 非収益事業 | 教育事業そのものに含まれるものであり非収益事業となる。 |
6 給食 | 非収益事業 | 学校給食法等の規定に基づいて行う学校給食の事業に準ずるものであり非収益事業となる。 |
7 収益事業となる事業であっても、当該事業がその幼稚園の園児(その関係者を含む。)を対象とするもので実費弁償方式によっていると認められるものについては、法人税基本通達15-1-28((実費弁償による事務処理の受託等))と同様、税務署長の確認を条件として非収益事業とすることができる |
(3)通信業
学校法人等の行う通信業は収益事業として課税対象とされます。
通信業とは、①他人の通信を媒介・介助する事業、②通信設備を他人の通信の用に供する事業、③多数の者によって直接受信される通信の送信を行う事業であるとされており、無線呼出業務や電報・郵便物もしくは信書便物の集配業務は当然これに含まれます。この他に公衆電話やサービス業務、共同アンテナの保守・管理を行う共同聴取聴視業務も通信業に含まれます。(法基通15-1-24)
(斎藤総合税理士法人 税理士 内藤浩之)