今週も引き続き国、地方公共団体等に対する仕入税額控除の特例のポイントです。
1.仕入れに係る消費税額の計算方法
ほとんどの学校法人の課税売上割合は95%未満となります。この場合、原則課税制度においては仕入れに係る消費税額を、「個別対応方式」か「一括比例配分方式」により計算することになります。
「仕入れに係る消費税額」
= 「調整前の仕入れに係る消費税額」 - 「特例の適用を受けた仕入れに係る消費税額」
個別対応方式を採用した場合の「特例の適用を受けた仕入れに係る消費税額」は、次の(1)から(3)までの金額の合計額をいいます。
(1)課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れにのみ使途が特定されている
特定収入の額(A) × 6.3/108
(2)課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れにのみ使途が
特定されている特定収入の額(B) × 6.3/108 × 課税売上割合
(3)(調整前の仕入れに係る消費税額 - (1) - (2))× 調整割合
他方で、一括比例配分方式を採用した場合の「特例の適用を受けた仕入れに係る消費税額」は、次の(1)と(2)の金額の合計額をいいます。
(1) 課税仕入れにのみ使途が特定されている特定収入の額 × 6.3/108 × 課税売上割合
(2)(調整前の仕入れに係る消費税額 - (1))× 調整割合
2.具体的な計算例
(1)特定収入
(内訳)
Aの特定収入 1,000,000円
Bの特定収入 2,000,000円
使途不特定の特定収入 500,000,000円
(2)課税仕入れ
(内訳)
課税資産の譲渡等にのみ要するもの 3,000,000円
その他の資産の譲渡等にのみ要するもの 200,000,000円
課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの 250,000,000円
(3)課税売上割合:5% , 調整割合:10%
● 個別対応方式を採用した場合の仕入れに係る消費税額
(1)調整前の仕入れに係る消費税額
①課税資産の譲渡等にのみ要するもの
3,000,000円 × 6.3/108 = 175,000円
②課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの
250,000,000円 × 6.3/108 = 14,583,333円
③① + ② × 5%(課税売上割合) = 904,166円
(2)特例の適用を受けた仕入れに係る消費税額
① ア 1,000,000円 × 6.3/108 = 58,333円
イ 2,000,000円 × 6.3/108 × 5%(課税売上割合) = 5,833
②( 904,166 - 58,333円 - 5,833円 ) × 10%(調整割合) = 84,000円
③① + ② = 148,166円
(3)仕入れに係る消費税額
(1) - (2) = 820,166円
● 一括比例配分方式を採用した場合の仕入れに係る消費税額
(1)調整前の仕入れに係る消費税額
(3,000,000円 + 200,000,000円 + 250,000,000円)× 6.3/108 = 26,425,000円
26,425,000円 × 5%(課税売上割合) = 1,321,250円
(2)特例の適用を受けた仕入れに係る消費税額
①(1,000,000円 + 2,000,000円) × 6.3/108 × 5%(課税売上割合) = 8,750円
②(1,321,250円 - 8,750円) × 10%(調整割合) = 131,250円
③① + ② = 140,000円
(3)仕入れに係る消費税額
(1) - (2) = 1,181,250円
照井 俊行