関東支社・関西支社 在宅勤務再開について  [ 詳細はこちら ]

学校会計のチカラ
活動区分資金収支計算書の作成上の留意点 4

前回は「教育活動による資金収支」、「施設整備等活動による資金収支」及び「その他の活動による資金収支」に区分する項目についての個別的留意点について解説しました。本項最終回となる今回は、活動区分資金収支計算書において最も特徴的な処理と言える「調整勘定等」について、具体的な計算設例を用いて解説します。

1. 「調整勘定等」について

資金収支計算書では、収入の部と支出の部の末尾に「資金収入調整勘定」と「資金支出調整勘定」をそれぞれ設けることで、当該会計年度における支払資金(現金及びいつでも引き出すことができる預貯金をいう。以下同じ。)の収入及び支出のてん末を明らかにしています。ここで、活動区分資金収支計算書は、資金収支計算書に記載された決算額を基に、「教育活動」、「施設整備等活動」、「その他の活動」という3つの活動区分に分けることで作成されるものなので、この「資金収入調整勘定」と「資金支出調整勘定」についても3つの活動区分に分ける必要があります。

そこで、活動区分資金収支計算書の作成上、3つの活動区分ごとに、資金収支計算書の調整勘定(期末未収入金、前期末前受金、期末未払金、前期末前払金等)に、調整勘定に関連する資金収入(前受金収入、前期末未収入金収入等)及び資金支出(前期末未払金支払支出、前払金支払支出等)を相互に加減した額(調整勘定等)を記載することとしました。これにより、収入と支出を一覧表形式で表示するに過ぎない資金収支計算書とは異なる、3つの活動区分ごとの支払資金のてん末を明らかにすることができています。
なお、「調整勘定等」には、資金収支計算書における資金収支調整勘定に関連する項目を記載することになるので、前受金、未収入金、未払金、前払金のほか、手形債権及び債務に関連する収支の項目が含まれることになります(実務指針45号1-7)。したがって、資金収支計算書の「その他の収入」の小科目である「預り金受入収入」、「仮払金回収収入」、「立替金回収収入」、「仮受金受入収入」などや「その他の支出」の小科目である「預り金支払支出」、「仮払金支払支出」、「立替金支払支出」、「仮受金支払支出」などの経過的な活動に係る資金収支は、資金収支調整勘定に関連する項目ではないので、第8号通知にしたがって活動区分資金収支計算書の「その他の活動」に区分計上されますので注意して下さい。
この3つの活動区分ごとの「調整勘定等」は、資金収支計算書の調整勘定に、調整勘定に関連する資金収入及び資金支出を相互に加減した純額で示されていますので、その「調整勘定等」がどのような調整勘定を集計しているのか明らかではありません。したがって、その詳細な内容を明示するため、活動区分資金収支計算書の末尾に、「活動区分ごとの調整勘定等の加減の計算過程の注記」を記載することにしました。

2. 調整勘定等に関する設例

具体的な計算設例を用いて、「活動区分ごとの調整勘定等の加減の計算過程の注記」を確認します。

資金収支計算書(一部抜粋)

(収入の部)

前受金収入 (   454)
  入学金前受金収入    454
その他の収入 (   39)
  前期末未収入金収入    39
  預り金受入収入    4
資金収入調整勘定 (   △500)
  期末未収入金    △45
  前期末前受金    △455

(支出の部)

その他の支出 (   47)
  前期末未払金支払支出    35
  前払金支払支出    12
資金支出調整勘定 (   △97)
  期末未払金    △47
  期末手形債務    △50

活動区分ごとの調整勘定等の計算過程は以下のとおり。

活動区分ごとの調整勘定等の計算過程

(注1) 第8号通知Ⅲ1.(注記例)の脚注において、「(注)該当する項目のみに数値を記入する。」とされていることから、該当する項目に金額がない場合であっても項目を省略できない点留意して下さい(実務指針45号5-1)。表示上、この場合は、「0」ないし「-」と記載するのが適当でしょう。本問の場合は、「前期末前払金」がそれに該当します。

(注2) 「前期末未収入金収入」及び「期末未収入金」については、学費などの未収に伴うものと仮定して、すべて「教育活動による資金収支」に区分しています。なお、施設設備補助金収入の未収などは「施設整備等活動による資金収支」に区分します。

(注3) 「前期末未払金支払支出」、「期末未払金」及び「期末手形債務」については、建物や機器備品などの購入に伴うものと仮定して、すべて「施設整備等活動による資金収支」に区分しています。ただ、文科省所轄学校法人であれば、通常期末に消耗経費や水道光熱費などの未払いが生じるでしょうから、「教育活動による資金収支」の欄で、これらの科目が「0」ないし「-」となることは少ないでしょう。

(注4) 「調整勘定等の加減の計算過程の注記」を作成する上で、注意すべき事項の一つとして、未払金を「教育活動」と「施設整備等」に区分することが挙げられます。この点、基本金明細表を作成する上で生じる第1号基本金の未組入高は、「施設整備等活動」に伴う未払金と一致する場合が多いので、相互に照合するなどして計算書類間の整合性を確認することは有効であると考えます。

(注5) 「その他の活動による資金収支」の欄に金額が記入されるのは、たとえば、「受取利息・配当金収入」の未経過利息分を未収計上したり、「借入金等利息支出」の未経過利息分を未払計上したりする場合などが考えられます。

(注6) 「預り金受入収入」は資金収支調整勘定に関連する資金収支ではないので、調整勘定等に計上せずに、「その他の活動による資金収支」に総額表示されます。

最後に本項の締め括りとして、活動区分資金収支計算書における用語の定義を以下にまとめましたので確認して下さい。

(1)「教育活動による資金収支」
= (2)「施設整備等活動による資金収支」、(3) 「その他の活動による資金収支」以外のもの

(2)「施設整備等活動による資金収支」
=施設若しくは設備の取得又は売却その他これらに類する活動

その他これらに類する活動とは、資産の額の増加を伴う施設若しくは設備の改修等であり、修繕費や除却に伴う経費は含めない。

(注)施設設備の拡充等のための寄付金収入⇒「施設設備寄付金収入
施設設備の拡充等のための補助金収入⇒「施設設備補助金収入
施設設備に用途指定のある特定資産の取崩しに伴う収入⇒「第2号基本金引当特定資産取崩収入」もしくは「(何)引当特定資産取崩収入」

(3)「その他の活動による資金収支」
= 財務活動、収益事業に係る活動、預り金の受け払い等の経過的な活動及び過年度修正額

(注)施設設備以外に用途指定のある特定資産の取崩しに伴う収入⇒ 「第3号基本金引当特定資産取崩収入」もしくは「(何)引当特定資産取崩収入」

「貸付金回収収入」、「貸付金支払支出」、「預り金受入収入」、「預り金支払支出」、「立替金・仮払金・仮受金等の収入支出」その他これらに類する経過的な活動に係る資金収入及び資金支出も 「その他の活動による資金収支」に含まれる。

【参考】学校法人会計のすべて・第3版(税務経理協会)

(公認会計士 津村 玲)


とは

学校法人向け業務システム、インターネット出願システム、園務効率化システム。
私立学校向けの3つのサービスをご用意しています。