今回は学校法人等に対して一定の資産を譲渡した場合の譲渡課税の取扱い、相続財産を贈与した場合の相続税の非課税規定、学校法人が学校用地の取得する際の収用等の課税の特例、及びその他の税金について説明します。
贈与等に係るみなし譲渡課税と非課税特例
個人が学校法人等に対して譲渡所得の基因となる財産や山林を寄附した場合に、国税庁長官から一定の要件を満たすものとして承認を受けたものについて、その寄附に基づく譲渡所得等が非課税とされます。(措法40条)
(1) 国税庁長官の承認を受けるための要件
次に掲げる要件の全てを満たすことが必要とされています。
- その寄附が、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること
- 寄附した財産が、その寄附があった日以後2年以内に寄附を受けた学校法人等の公益目的事業の用に供され、又は供される見込みであること
- 学校法人等に対して財産を寄附することにより、寄附者の所得税の負担を不当に減少させ、又は寄附者の親族等の相続税若しくは贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないこと
(2) 国税庁長官の承認を受けるための手続き
譲渡所得の非課税について国税庁長官の承認を受けようとするときは、財産の寄附があった日から4ヵ月以内に寄附を行った者の納税地の所轄税務署長を経由して承認申請書を提出しなければなりません。
(3) 私立大学特例
私立大学又は高等専門学校を設置する学校法人への財産の寄附を促進するため、現物寄附については非課税承認要件を次のように緩和されるとともに手続きが簡素化されました。
- その学校法人の役員及び親族以外の者からの財産の寄附であること
- その寄附を受けた学校法人が、寄附を受けた財産について基本金に組み入れる方法により管理していること
- 学校法人の理事会等の機関において、その財産の寄附を受けること及びその寄附を受けた財産について、基本金に組み入れることが決定されていること
学校法人等に相続財産を贈与した場合の相続税の非課税規定
相続又は遺贈により財産を取得した者がその相続又は遺贈により取得した財産をその相続税の申告期限までに国若しくは地方公共団体等その他公益を目的とする事業を行う法人のうち、教育若しくは科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献、その他公益の増進に著しく寄与する特定のものに対して贈与した場合には、その贈与によって、その贈与者等の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となる場合を除き、その贈与した財産の価額には相続税を課さないこととされています。(措置法70条1項・10項)
(1) 適用要件
この制度の適用を受けるためには、次に掲げる要件を満たすことが必要です。
- その贈与をした財産は、相続又は遺贈により取得した財産であること
- その贈与は、相続税の申告期限までに行われること
- その贈与の相手方は、国、地方公共団体、特定の公益法人、又は認定NPO法人であること特定の公益法人には、国公立の学校法人、私立学校法第3条に規定する学校法人が含まれます。
(措置法令40条の3)
学校用地等の取得と収用等の課税の特例
学校法人が学校用地の取得に際して、土地等を収用し又は買い取る場合において所定の要件を満たす場合にはその土地等の所有者は収用等の課税の特例を受けることができます。
(1) 土地収用制度
公共事業のために土地を必要とする場合に土地収用法の手続をとることにより土地所有者等に適正な補償をした上で土地を取得(収用)することができます。
土地収用制度の対象となる事業は、土地収用法第3条に定められており、学校法人については学校用地の取得のために土地収用制度の適用を受けることができるとされています。
(2) 収用等の課税の特例
公共事業の用に供するため資産を収用された者に対しては、その資産の譲渡による所得についての税負担を軽減することを目的とする課税の特例制度が設けられています。
① 代替資産を取得した場合等の課税の特例等
- 収用等された資産の対価補償金等で代替資産を取得した場合には、取得価額の引継(圧縮記帳)による課税の繰延ができます。
- 資産が収用された場合に対価補償金に代えて収用等された資産と同種の他の資産を取得したときは、収用等された資産の譲渡がなかったものとして譲渡所得の課税を繰り延べることができます。
② 譲渡所得等の特別控除
資産が収用等された場合に、上記(ア)の特例を受けないときは、収用等された資産の譲渡所得
の金額から最高5,000万円までの特別控除を差し引くことができます。この特別控除制度につい
ては、買取り等の申出があった日から6ヵ月を経過した日までに収用等が行われることが要件と
されています。
(3) 学校法人の土地等の買取りと特例の適用
土地収用法の規定による事業認定がなくても特掲事業に該当するものは収用等の課税の特例を受けることができます。
学校法人については私立学校法に規定する幼稚園及び高等学校の施設に関する事業が特掲事業とされ、収用委員会の承認がなくても土地収用権者になれます。
(4) 税務署との事前協議
学校法人が土地収用法の規定による事業認定を受けた場合又は特掲事業に該当する土地の買取りを行う場合に収用等の課税の特例の適用を受けようとするときは、資産の所在地を所轄する税務署との間で事前協議を行い税務署長の確認を得てから契約等を行うことが必要です。
その他の税金
[ 不動産取得税 ]
学校法人等が行う次の不動産の取得については非課税とされています。
① 学校法人等がその設置する学校において直接保育又は教育の用に供する不動産
② 学校法人等がその設置する寄宿舎で学校教育法第1条の学校又は同法第124条の専修学校に
係るものにおいて直接その用に供する不動産
上記のほか次のものが非課税とされています。
- 公益社団法人若しくは公益財団法人、宗教法人又は社会福祉法人がその設置する幼稚園において直接保育の用に供する不動産。
- 公益社団法人若しくは公益財団法人がその設置する図書館において直接その用に供する不動産 他
[ 登録免許税 ]
学校法人(私立学校法64条4項の規定により設置された法人を含む。以下「学校法人等」という)について、次のものが非課税とされています。
① 校舎、寄宿舎、図書館その他保育又は教育上直接必要な附属建物(以下校舎等)という)の所有権の取得登記
② 校舎等の敷地、運動場、実習用地その他の直接に保育又は教育の用に供する土地の権利の取得登記
非課税の取扱いを受けるためには、その登記等が①又は②に該当するものであることについて、学校法人の所轄庁が証明した書類を添付することが必要とされます。
このほか、学校法人等が設置運営する保育所等及び認定こども園の建物、建物の敷地の用に供する土地の権利(土地の所有権及び土地の上に存する権利を含む)の取得登記についても非課税とされています。
[ 固定資産税・都市計画税 ]
学校法人等が所有する次の固定資産については非課税とされています。
① 学校法人等がその設置する学校において直接保育又は教育の用に供する不動産
② 学校法人等がその設置する寄宿舎で学校教育法第1条の学校又は同法第124条の専修学校に係るものにおいて直接その用に供する固定資産
そのほか次のものが非課税とされています。
- 公益社団法人若しくは公益財団法人、宗教法人法又は社会福祉法人がその設置する幼稚園において直接保育の用に供する固定資産
- 公的医療機関の開設者、特定医療法人等がその設置する看護師、准看護師、歯科衛生士等の医療関係者の養成所において直接教育の用に供する固定資産
- 公益社団法人又は公益財団法人がその設置する図書館において直接その用に供する固定資産
- 公益社団法人若しくは公益財団法人で学生又は生徒の修学を援助することを目的とするものが設置する一定の寄宿舎において直接その用に供する家屋他
[ 印 紙 税 ]
学校法人等が作成する受取書は、収益事業に関して作成するものであっても営業に関しないものとして取り扱われ、印紙税は課税されません。
受取書以外の印紙税課税文書は、原則として普通法人と同様に課税されます。
[参考文献] 学校法人会計のすべて・第3版(編著 公認会計士 齋藤力夫)
(税理士 綱野 誠次)