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学校会計のチカラ
特殊な給与に関する源泉所得税

今週の学校会計のチカラは、給与所得のうち、現物給与や非課税給与などの特殊な給与に関する源泉所得税の取扱いについて解説します。

1.課税対象となる給与所得の範囲

給与所得とは、雇用契約等に基づき提供された労務に対する対価とされ、金銭で支給を受ける通常の給料・賞与のほか、現物給与のような物や権利等の供与により受ける経済的利益も含まれます。したがって、会計上は人件費以外の科目で支払ったものの中に税務上の給与として源泉所得税を課税すべきものが含まれていることがあります。

● 経済的利益の具体例 ●

① 物品等の無償又は低価による譲渡
② 土地・家屋等の無償又は低価による貸付
③ 金銭の無利息又は低利による貸付
④ ②及び③以外の用役の無償又は低価による提供
⑤ 借入金等の債務免除又は債務負担を受けた場合の利益相当額

2.非課税とされる給与

前述のとおり、使用者から支給を受ける金銭や現物給与等の経済的利益については、原則として課税の対象となりますが、所得税法ではすべての給与所得を課税の対象としているわけではありません。通勤手当や旅費などのように実費弁償的性格を有すること等の理由により非課税とされているもののほか、現物給与については、次の理由により非課税とされているものもあります。

  • 職務の性質上欠くことのできないもので、主として使用者側の業務遂行上の必要から支給されるもの
  • 換金性に欠けるもの
  • その評価が困難なもの
  • 受給者側に物品などの選択の余地がないもの
  • 政策上特別の配慮を要するもの

ただし、非課税とされる給与について、支給対象者(支給対象者が一部の者に限定されていない等)・支給内容(金銭ではなく現物での支給であること等)・支給金額(具体的上限金額や通常必要とされる金額を超えない等)その他の詳細な要件が定められており、それらの要件を満たさない場合には、給与所得として課税されるため、注意が必要です。

非課税とされる給与とは、具体的には次のとおりです。

項 目 課税上の取扱いと留意点
通勤手当

通勤定期券

①1か月あたりの合理的な運賃等の額(最も経済的かつ合理的な経路及び方法によるもの)は、課税されません。

②1か月あたりの非課税最高限度額は、平成27年12月支給分までは10万円でしたが、平成28年1月以後に支給されるものは15万円に改正されています。

③自動車や自転車などの交通用具を使用している人への非課税金額は、通勤距離に応じた金額が定められています。

④「合理的な運賃等の額」には、新幹線通勤の特別急行料金を含むことはできますが、グリーン料金は含まれません。
旅費

①次に掲げる旅行に必要な支出に充てるための金品で通常必要と認められるものは、課税されません。

  • 勤務場所を離れてその職務を遂行するための旅行
  • 転任に伴う転居のための旅行
  • 就職者、退職者、死亡退職者の遺族の転居のための旅行

②非常勤役員等(会社その他の団体の役員、顧問、相談役、参与)の出勤のための費用は、旅費に準ずるものと考え、直接必要と認められるものは、課税されません。

③外国人に対する休暇帰国のためのホームリーブ旅費については、就業規則等の定めにより概ね1年以上の期間を経過するごとに休暇のための帰国を認め、その帰国に必要な支出に充てるための金品で通常必要と認められるものは、課税されません。

宿日直料 ①宿日直を本来の職務とする人の手当は全額が課税されます。

②1回の宿日直につき4,000円までの部分については、課税されません。

③宿日直勤務に食事が支給される場合には、4,000円から食事の価額を控除した残額までの部分が、課税されません。
業務のための交際費等 交際費や接待費などとして役員又は使用人に支給される金品は原則として給与所得とされますが、使用者の業務のために使用したことの事績が明らかなものについては、課税されません。
結婚祝金品等 雇用契約等に基づいて支給される結婚、出産等の祝金品は、その金額が支給を受ける人の地位などに照らして社会通念上相当と認められるものであれば、課税されません。
葬祭料、香典、見舞金等 葬祭料、香典、災害等の見舞金は、その金額が社会通念上相当と認められるものであれば、課税されません。
休業手当金等  実質的に失業等の給付や災害見舞金としての性格を有するものとして、私立学校教職員共済法第25条<国家公務員共済組合法の準用>の規定による休業手当金については、課税されません。
労働基準法等による各種補償金 労働基準法や船員法の規定により受ける療養の給付や休業補償等については、課税されません。
学資金 ①学資に充てるために給付される金品(給与としての性質を有するものは除きます。)は、非課税とされています。

②使用者から就学中の子弟を有する使用人等に対し学資金の名目で支給される金品や、使用者から使用人等に対しその使用人等の学資に充てるため支給される金品は、原則として給与所得に該当し非課税の適用はありません。

③使用者が使用人に対して、その使用人が修学する学校教育法第1条に規定する学校(大学及び高等専門学校を除きます。)の費用として支給する学資金で適正な金額のものは、課税されません。

④使用者が、業務遂行上の必要に基づき技術や知識の習得等をさせるための研修会・講習会等の出席費用として支給される金品で、役員又は使用者の親族のみを対象としているものでなく、費用が適正なものは、課税されません。
死亡退職者の給与等 死亡した人に対する給与や退職金で、その死亡後に支給期の到来するもののうち、相続税の課税価格計算の基礎に算入されるものは、課税されません。
在外手当 国外で勤務する使用人等に対し通常の給与に加算して支給する在外手当のうち、勤務地の物価、生活水準、生活環境、為替相場等の格差を補填するためのもので、国内で勤務した場合に比べて利益を受けると認められない部分の金額は、課税されません。

深夜勤務者の食事代

①学資に充てるために給付される金品(給与としての性質を有するものは除きます。)は、非課税とされています。正規の勤務時間の一部又は全部が深夜(午後10時から翌日午前5時)である深夜勤務者に対し、夜食の提供ができないためこれに代えて通常の給与に加算して支給される食事のための金品で、その支給額が勤務1回につき300円以下のものは、課税されません。

②支給額が300円以下であるかの判定は、消費税額を除いた金額によります。(10円未満の端数は切り捨てます。)
食事の支給

①通常の勤務時間外に宿日直又は残業をした使用人に対する食事の支給は、課税されません。

②使用者が食事の支給を行った場合において、次のいずれの要件も満たすときは、課税されません。

  • 支給を受ける人が、食事の価額の半額以上を負担している
  • 使用者の負担額が、月額3,500円以下である

③支給額が3,500円以下であるかの判定は、その人が負担した金額と消費税額を除いた金額によります。(10円未満の端数は切り捨てます。)

制服等の支給 ①現金で支給する被服手当等は、課税の対象となります。

②職務の性質上制服を着用しなければならない人に支給又は貸与される制服は、課税されません。

③制服と共に着用すべき身回品(帽子、シャツ、ネクタイ、手袋、靴等)の支給は、課税されません。

④専ら勤務場所のみにおいて着用する事務服・作業服等は、課税されません。
永年勤続記念品等の支給 ①金銭(商品券等の金券を含みます。)により支給する場合には、金額の多寡にかかわらず、課税の対象となります。

②旅行ギフト券等を支給する場合には、原則として課税の対象となりますが、概ね1年以内に旅行をし、代金の精算を行い、その旅行の事実を確認できる書類を備えている場合には、課税しなくてよいこととされています。

③記念品等の金額が、勤続期間等に照らし社会通念上相当と認められるものであり、表彰が概ね10年以上の勤続年数(2回以上の表彰を受ける場合には、概ね5年以上の間隔をおいているもの)を対象としているのであれば、課税されません。

創業記念品等の支給

①金銭(商品券等の金券を含みます。)により支給する場合には、金額の多寡にかかわらず、課税の対象となります。

②記念品が社会通念上記念品としてふさわしいもので、その価額が10,000円以下のものであること、かつ、創業後、概ね5年以上の期間ごとに支給するものは、課税されません。

商品・製品等の値引販売

①不動産の販売は、値引販売の取扱いの対象とはなりません。

②使用人等に対し、使用者の取り扱う商品・製品等の値引販売をすることにより生ずる経済的利益であっても、次のいずれにも該当する場合には、課税されません。

  • 販売価額が、取得価額以上であること
  • 販売価額が、通常販売価額の概ね70%以上であること
  • 値引率が、一律又は地位や勤続年数に応じて全体として合理的なバランスが保たれる範囲内の格差により定められていること
  • 値引販売をする商品・製品等の数量が、一般の消費者が家事のために通常消費すると認められる程度のものであること
寄宿舎の電気料等の使用者負担 使用者が、寄宿舎の電気・ガス・水道等の料金を負担する場合の経済的利益については、その料金の額が、その寄宿舎に居住するために通常必要であると認められる範囲内のものであって、各人ごとの使用部分に相当する金額が明らかでない場合には、課税されません。
金銭の無利息貸付等

①使用者が、使用人等に対し金銭を無利息又は低利で貸し付けた場合には、原則として課税の対象となります。

②無利息又は低利により貸し付けた場合であっても、次のいずれかに該当する場合には、課税されません。

  • 災害、疾病等に起因する貸付で返済に要する期間として合理的と認められる期間内に受ける場合の経済的利益
  • 貸付利息が使用者における平均調達金利などの合理的と認められるもので徴収されている場合の経済的利益
  • その年における利益の合計額が5,000円以下と少額である場合の経済的利益
用役の提供等 使用者が福利厚生施設の運営費等を負担することにより使用人等が施設を低額で利用できるなどの経済的利益や、使用者が興行業や運送業等のサービス業を経営することにより使用人等が受ける経済的利益については、その経済的利益の額が著しく多額な場合や役員だけを対象としてサービスを提供する場合を除いて、課税されません。

レクリエーション費用の負担

①レクリエーション行事不参加者へ、参加に代えて金銭を支給した場合においては、不参加の理由に応じて次のとおり取り扱うこととされています。

  • 業務上の都合以外 … 参加者及び不参加者の全員が、給与の支給があったものとして課税の対象となります。
  • 業務上の都合 … 参加者が受ける経済的利益は課税されませんが、不参加者に支給する金銭は課税の対象となります。

②次の全ての要件を満たすレクリエーション費用については、課税されません。

  • 社会通念上、一般的に行われていると認められる行事であること
  • 自己都合による不参加者に、参加に代えて金銭を支給しないこと
  • 役員だけを対象として、その行事の費用を負担するものではないこと

③社内レクリエーション旅行を行う場合には、次のいずれの要件のいずれも満たしていれば、課税されません。

  • 旅行に要する期間が4泊5日以内であること
    (目的地が海外の場合には、目的地における滞在日数により判定します。)
  • 全従業員の50%以上の参加者があること
  • 旅行に要する金額が、社会通念上相当であると認められるものであること

損害賠償金等の負担

①使用人等の行為に基因する損害賠償金・慰謝料・示談金等及びこれらに関する弁護士報酬等の費用を負担することにより使用人等が受ける経済的利益については、原則として課税の対象となります。

②その使用人等の行為が、業務の遂行に関連するものであって、その行為者に故意や重過失が認められない場合には、課税されません。
その他 上記のほかにも、「生命保険料や損害保険料の負担」「少額保険料の負担」「役員賠償責任保険料の負担」「ゴルフクラブ・レジャークラブの入会金等の負担」「ロータリークラブ・ライオンズクラブの入会金等の負担」「社交団体の入会金等の負担」「住宅等の貸与」などについて、非課税とされる給与の定めがあります。

( 斎藤総合税理士法人 坂寄 隆 )


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