今回も、前回に引き続き法人税の概要と各収益事業の個別的取扱いを解説いたします。
1. 資産の運用収入
学校法人等が収益事業から生じた所得を預金や有価証券等に運用し、その運用から生じた利息や配当金は、収益事業の収入に含まれます。しかし、収益事業から生じた所得を運用した預金や有価証券であっても、それが収益事業を運営するために通常必要とする範囲の額を超える余裕資金であり、その預金や有価証券を収益事業以外の資産として区分経理をしている場合には、その区分経理をした預金や有価証券から生じた利息や配当金は収益事業の収入に含めないことができます。(法基通15-1-7)
2. 固定資産の処分損益
学校法人等が収益事業の用に供する固定資産等を処分する行為は、収益事業の付随行為になります。したがって、収益事業の用に供している諸設備を売却して得た利益は所得に加算され、売却による損失又は除却による損失は所得から控除されることになります。
しかし、次のような場合の固定資産の処分損益は、当該資産が収益事業に属するものであっても、収益事業の所得計算に含めないでよいとされています。(法基通15-2-10)
- 相当期間(概ね10年)にわたり固定資産として保有していた土地・建物又は構築物の譲渡又は除却による損益学校法人等に関する法人税は、法人税法施行令第5条第1項に列挙された34業種の収益事業から生ずる所得についてだけ課税されるものです。相当期間保有していた不動産を売却して得た利益というのは、保有期間の不動産の値上がりによる利益、キャピタル・ゲインであると考えられ、収益事業の活動から生じた利益ではありません。したがって、当該不動産が収益事業に使用されていたものであっても、概ね10年以上保有していた場合は法人税の課税対象となりません。
- 収益事業の全部又は一部を廃止した場合、その廃止した収益事業に係る固定資産の譲渡又は除却等による損益も、収益事業の所得計算に含めないでよいこととされています。
3. 委託契約等による事業
課税対象となる収益事業は、学校法人等が法人税法施行令第5条第1項に列挙された事業を「継続して事業場を設けて行う」ことが要件とされています。しかしながら、学校法人等が、自らは事業場をもたずに、委託契約、組合契約又は信託契約によって、事業を他の者にさせ、当該事業から生じた収益の分配等を受ける場合には、実質的に収益事業を行っているのと何ら変わらない成果があがります。そこで法人税法では、学校法人等がこのような委託契約等を結んでいる場合には、当該法人が自ら収益事業を行っているものとして取り扱うこととされています。(法基通15-1-2)
4. 非課税となる収益事業
学校法人等が法人税法施行令第5条第1項に列挙された収益事業を行う場合であっても、身体障害者等が全従事者の半数を占めている場合等には、その事業は収益事業に含まれないこととされています。(法令5条2項)
5. 各収益事業の取り扱い
(1) 物品販売業
① 学校法人等の物品販売業
- 教科書その他これに類する教材の販売
学校法人等が行う教科書その他これに類する教材の販売は、収益事業に該当しません。(法基通15-1-10(2))
「教科書その他これに類する教材」とは、教科書、参考書、問題集等であって、学校の指定に基づいて授業において教材として用いるために、その学校の先生、生徒等を対象として販売されるものと定義付けされています。したがって、授業において使用しない参考書など、任意に学生<生徒に販売している場合には、ここでいう教科書等に該当せず、課税対象となります。
同じ学校法人等であっても、収益事業に該当する「技芸教授業」を行っている場合、その技芸教授業に付随して行う教科書その他これに類する教材の販売は、技芸教授業に含めて課税対象となります。(法基通15-1-6) - 文房具、布地、ミシン等の販売
学校法人等が行うノート、筆記具などの文房具、布地、糸、編糸、食料品などの材料又はミシン、編物機械、厨房用品などの用具の販売は、たとえこれらの物品が学校の指定に基づいて授業に用いられるものであっても、物品販売業として課税対象となります。(法基通15-1-10(3)) - 制服、制帽等の販売
学校法人等が行う制服、制帽等の販売は、物品販売業に該当します。(同通達(4))これに類する通学鞄、靴、ネクタイ、運動衣なども含まれます。
なお、文房具、制服等を学校法人等が直接販売せず、外部の業者にこれを製作、販売させ、業者から販売手数料や謝礼金等を受け取るときは、「物品販売業」又は「仲立業」として収益事業に該当します。 - バザーによる物品販売
学校法人等が行うバザーで年1、2回開催される程度のものは、物品販売業に該当しません。(同通達(5))
学校法人等が収益事業に該当する技芸教授業を行い、その技芸教授業に関連して開催したバザーは、当該技芸教授業の付随行為となり課税の対象となります。(法基通15-1-6)
(斎藤総合税理士法人 税理士 内藤 浩之)