新年あけましておめでとうございます。毎週「学校会計のチカラ」をお読み頂きありがとうございます。本年も読者の方々の日々の業務に役立つ情報を連載していきたいと思いますので、変わらずご愛顧の程よろしくお願い致します。
本年第1回目の連載では、「雑収入」について解説します。
1.雑収入に該当する収入とは
雑収入とは、学校法人の事業活動収入のうち、学生生徒等納付金収入から受取利息・配当金収入までのいずれにも該当しない事業活動収入をいいます。
ここで、「雑収入」に計上される主な小科目とその内容を以下に示します。
科 目 名 | 内 容 |
施設設備利用料収入 | 所有する有形固定資産の賃貸による収入
校舎等使用料、設備使用料、グラウンド使用料、テニスコート使用料、野球場使用料、地代、駐車料、売店・食堂等の施設設備の賃貸料、教職員寮の家賃、学生生徒寮の家賃等を含む。 |
廃品売却収入 | 固定資産に含まれない少額な物品、例えば消耗品等を売却したときの収入 |
退職金団体交付金収入 | 退職金社団(財団)から退職資金その他の交付を受けたときの収入
私立大学対処金財団交付金収入は別科目で表示する。 |
入学案内書領布収入 | 入学案内書を販売したときの収入 |
研究関連収入 | 科学研究費補助金収入のうち、学校法人の負担となる間接経費助成分 |
過年度修正収入 | 前年度以前に計上した収入の修正額 |
その他の雑収入 | 金額が多額になる場合は、特定事項を取り出して小科目を設けるか又は注記をする。これに該当しない以下のような収入は、「その他の雑収入」にまとめて表示することができる。
保険料取扱事務手数料、公衆電話取扱手数料、教育実習謝金、コピー使用料等、図書の大量購入等による値引又は現金割引額(図書を値引前の金額で計上し、値引分を収入で処理する場合) |
2.雑収入に該当する収入の留意点
(1) 施設設備利用料収入について
平成25年改正前の学校法人会計基準では、施設設備利用料収入(小科目)は、資産運用収入(大科目)の内訳科目でした。しかし、今般の基準改正で資産運用収入(大科目)の内訳科目である施設設備利用料収入と受取利息・配当金収入がそれぞれ事業活動収支計算書において、前者は教育活動収入に計上され、後者は教育活動外収入に計上されることとなったため、資産運用収入(大科目)は廃止されました。そして、その内訳科目であった施設設備利用料収入(小科目)は、資金収支計算書上、雑収入(大科目)の内訳科目となり、その記載場所が変わることになりました。
施設設備利用料収入(小科目)として考えられるのは、空き教室を他の目的で使用する第三者に貸出した場合の賃貸収入や駐車場収入等がありますが、今後は雑収入(大科目)の内訳科目として計上されることになります。
(2) 過年度修正収入について
企業会計原則では、過年度の会計処理に誤りがあった場合には、その誤りを発見した年度において原則として「前期損益修正損益」という科目を用いて特別損益処理するものとされています。一方で、平成25年改正前の学校法人会計基準では、このような過年度の会計処理の誤りを発見した場合に、どのような科目を用いて処理すべきかに関する明確な規定がなく、各学校法人において会計処理が区々となっていました。ただ、過年度会計処理の誤りについては、会計実務上、雑収入の「その他の雑収入」または管理経費(支出)の「雑費(支出)」で処理する場合が多く、当年度の補助金の計算に影響を及ぼさないように過年度の会計処理誤りを修正するという観点からは妥当な処理であったといえます。
そこで、各学校法人における会計処理の統一化を図るため、平成25年改正会計基準適用により、過年度における会計処理の誤りについては「過年度修正額」として、資金収支計算書、活動区分資金収支計算書及び事業活動収支計算書において、次のとおり処理することが明確に規定されました。
- 資金収支計算書においては、資金収入または資金支出があった年度において、資金収入は大科目「雑収入」に小科目「過年度修正収入」を設け、資金支出は大科目「管理経費支出」に小科目「過年度修正支出」を設けて処理するものとします。
- 活動区分資金収支計算書においては、資金収入または資金支出があった年度において、「その他の活動による資金収支」に小科目「過年度修正収入」または「過年度修正支出」を設けて処理するものとします。
- 事業活動収支計算書においては、資金収支を伴うものと伴わないもののいずれも「特別収支」の小科目「過年度修正額」で処理するものとします。
このように、過年度における会計処理の誤りについては、今後、「過年度修正収入・支出」として資金収支計算書上、雑収入の「その他の雑収入」または管理経費(支出)の「雑費(支出)」で処理するよう会計処理の統一化が図られました。これにより、本来であれば教育研究経費として補助金対象の経費で取り扱えたものが、過年度における期末未払金の計上誤りを理由に補助対象の経費として取り扱えなくなることが規定上明示されました。したがって、今後は購買取引に係る内部統制をなお一層強化し、期末未払金の計上漏れが生じないよう注意が必要となります。
なお、過年度修正額の区分についてとりまとめると下記のように整理されます。
計算書 | 資金収入 | 資金支出 | 事業活動収入
(非資金) | 事業活動支出
(非資金) |
資金収支計算書 | 「雑収入」
「過年度修正収入」 | 「雑収入」
「過年度修正支出」 | ― | ― |
活動区分資金収支計算書 | 「その他の活動」
「過年度修正収入」 | 「その他の活動」
「過年度修正支出」 | ― | ― |
事業活動資金収支計算書 | 「特別収支」
「その他の特別収入」 「過年度修正額」 | 「特別収支」
「その他の特別支出」 「過年度修正額」 | 「特別収支」
「その他の特別収入」 「過年度修正額」 | 「特別収支」
「その他の特別支出」 「過年度修正額」 |
(注)「特別収支」の「過年度修正額」には、資金収支を伴うものと、伴わないものとがあります。資金収支を伴うものとしては、①過年度の給与や退職金計算の誤りを当年度に精算した場合、②過年度に未払金として計上するべきであった経費を当年度に支払った場合、③過年度に徴収不能額として処理した債権を当年度に回収した場合、などが考えられます。
また、資金収支を伴わないものとしては、過年度の減価償却額や退職給与引当金(繰入額)等の計算誤りを当年度に修正した場合などが考えられます。
なお、過年度における会計処理の誤りに類似したものとして、「補助金返還額」がありますが、これは、教育活動収支の管理経費に計上され、「特別収支」(過年度修正額)に計上されるものではありません。
なぜなら、補助金は、過年度において一旦確定し収受しており、その一部に返還があったとしても返還命令決定通知に従ったものであり、過年度の修正には該当しないとされているからです(JICPA実務指針45号2-5)。
(公認会計士 津村 玲)