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学校会計のチカラ
経理規程作成ポイント(その3)

貸借対照表の作成ポイントでも紹介しましたが、いつなんどき大規模災害が発生し、学校法人が保有する資産が壊滅的なダメージを受けないとも限りません。

このような観点から、大規模災害等で学校法人が保有する校地校舎等に甚大な損害を受け、固定資産の使用が困難となり、かつ処分もできないような状況が生じている固定資産をどのように評価すべきかという視点から、固定資産の評価に関する事項も規定化しておくことが望ましいと考えます。

1. 有姿除却資産の適用範囲

① グループ償却

グループ償却を採用している学校法人においては、個々の機器備品等を減価償却管理システムまたは固定資産管理システムに登録している場合、使用が困難で処分ができない機器備品等を特定することが可能であると考えます。
そのため、当該取得価額を参考に按分計算を行う等の方法で有姿除却等損失の金額を合理的に算定することとなりますが、この点を規定化することとなります。

「例えば、第〇条グループ償却を行っている機器備品等が、大規模災害等で形はあるが使用できなくなった機器備品等については、当該取得価額を参考に按分計算を行い、有姿除却等損失の金額を合理的に算定するものとする。」などの規定を追加することも考えられます。

Q
グループ償却を行っている機器備品等についても、固定資産の評価の対象となるか。
A

グループ償却を行った場合、現物の有無にかかわらず、耐用年数の最終年度に一括除却処理する方法も妥当な会計処理として取り扱うものとされています。グループ償却はあくまで事務手続の簡素化という観点から認められるものでありますので、本来グループ償却を採用している場合には、固定資産の評価の対象にはなりません。

② 土 地

土地については、相当長期間にわたり使用が困難でかつ処分のできない状況は通常想定されませんが、今後数十年にわたり立入禁止とされ、その後の状況も判断できないような場合が想定されます。このような場合には、固定資産の評価を行うことが認められることも考えられます。
例えば、放射能等により土地が警戒区域に指定及び計画的避難区域等に指定された場合は、使用が不可能である場合が考えられます。この点を規定化することとなります。

「例えば、第〇条 大規模災害等で立ち入り禁止区域に指定され、今後数十年以上、又は計画的避難区域に指定され、今後数年以上土地の使用ができなくなると見込まれる場合には不動産鑑定評価を行い、貸借対照表上に適正な価格を表示するものとする。」などの規定を追加することも考えられます。

Q
土地についても固定資産の評価の対象となるか。また、土地を使用できない又はそれが困難な状況とは、どのような場合か。
A

土地についても固定資産の評価の対象となります。
固定資産の評価は、使用が困難となり、かつ処分ができないような状況にある固定資産について、資産計上を続けることが学校法人の財政状態を適切に表さないと考えられることから、備忘価額を残して貸借対照表の資産計上額から除くこととなります。
したがって、資産として計上されている土地についても評価対象に含まれます。

ただし、以下の条件の全てに該当する場合に、固定資産の評価を行うこととなります。

  • 大規模な災害等で立入禁止区域にある固定資産
  • 地中に空洞があり、崩落の危険があるような場合で、埋め戻して使用可能な状態にするためには巨額な支出を要する土地・建物
  • 使用が困難となった構築物だが、校舎と一体となっており、処分するためには長期にわたり校舎を閉鎖しなければならない場合

③ その他の固定資産

通常、その他の固定資産については、処分のできない状況は想定されないことから、使用が困難となった時点で除却により処理すれば足りると考えられます。この点を規定化することとなります。

「例えば、第〇条大規模災害等で、その他の固定資産等が使用困難となった場合は、当該年度において除却処分とする。」などの規定も追加することも考えられます。

Q
その他の固定資産についても固定資産の評価の対象となるか。
A

上記と同様の条件に全て該当する場合には、その他の固定資産(例えば、借地権、電話利用権、施設利用権等)についても固定資産の評価対象に含まれることとなります。

2. 有姿除却等損失と基本金の取崩し
Q
有姿除却等損失を計上した場合、固定資産は備忘価額を残すが、基本金は全額取崩しの対象となるため両者は一致しない。固定資産明細表及び基本金明細表上、その旨の注記を付す必要はあるか。
A

有姿除却等損失を計上した場合、「学校法人会計基準 第八号様式(第 36 条関係)」の注4にある「贈与、災害による廃棄その他特殊な事由による増加若しくは減少があった場合」に該当するため、当該事由を固定資産明細表(第八号様式)の摘要欄(書ききれない場合は脚注)に記載しなければなりません。
また、基本金明細表(第十号様式)では注記は求められていませんが、「要組入高」の取崩額及び当期末残高が固定資産明細表の当期減少額及び期末残高と一致しないことになるため、差異内容を基本金明細表等に記載することが望ましいです。

3. 再使用した場合
Q
一旦、固定資産の評価を行い、備忘価額を付した固定資産について、将来状況が変化し使用が困難でなくなったため、再度使用又は転用した場合には、当該固定資産の帳簿価額を増額させることはできるか。
A

将来において新たな知見が発見され、技術革新等により使用が困難であった状況等が解消され、使用又は転用が可能となる状況になった場合でも、当該固定資産の帳簿価額を増額させることはできません。

(赤川 富彦)


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