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学校会計のチカラ
新会計基準(貸借対照表の作成ポイント)

新会計基準では、貸借対照表上大科目「固定資産」の中科目として、新たに「特定資産」の科目が設けられ、その小科目として「第2号基本金引当特定資産」、「第3号基本金引当特定資産」、「(何)引当特定資産」を置くことが定められました。

以下に示す、「固定資産の評価等の会計処理の取扱い」は、平成25年9月2日付け文部科学省から「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)」(25高私参第8号、以下「第8号通知」という。)の通知に基づくものです。

固定資産の評価に係る会計処理

学校法人会計基準第25条では、「資産の評価は、取得価額をもってするもの」とされており、固定資産についてもその取得価額により評価されることになりますが、近年、東日本大震災等大規模な災害等により学校法人が保有する校地校舎等の固定資産の使用が困難となり、かつ処分もできないような状況が生じている固定資産があります。このような状況にある固定資産についても資産計上を続けることは、学校法人の財政状態を適切に表さないと考えられることから、一定の条件を付して、これまで実際に処分するまでは貸借対照表の資産計上額から除くことができなかったものについて、実際の処分を行わない場合(有姿除却等損失という。)でも貸借対照表の資産計上額から除くことができることとしました。

1.固定資産の評価と固定資産管理台帳

(1)学校法人が保有する有形固定資産又は無形固定資産について、現に使用することをやめ、かつ、将来も転用するなどにより、使用する予定のないものについては、理事会及び評議員会(私立学校法第42条第2項の規定に基づき、寄附行為をもって評議員会の議決を要することとしている場合に限る。)の承認を得た上で、備忘価額1円を残して貸借対照表の資産計上額から除くことができることとしました。
なお、備忘価格1円を残し資産計上額から除いた場合でも、固定資産管理台帳には1円を付して固定資産管理をすることが望ましいです。グループ償却資産についても同様、台帳で管理することが望ましいです。

固定資産について備忘価額を残して貸借対照表の資産計上額から除くことができるのは、以下の①から②までの条件に全て該当する場合をいいます。

① 固定資産の使用が困難である場合とは
社会通念上誰にとっても使用することが困難である場合であり、当該学校法人の個別的な事由で使用が
困難な場合を除きます。
なお、当該固定資産の使用を継続するために巨額な支出を要するなど、使用目的から考えて明らかに
合理的でない場合も使用が困難である場合に該当します。

② 処分ができない場合とは
通常想定される方法で処分できない場合であり、以下のようなケースが考えられます。

  • 当該固定資産を処分するためには、教育活動を長期にわたり中断しなければならないなど事業を行う上で重要な支障を来し、直ちに処分することが合理的でない場合
  • 法令の規制など、学校法人の都合によらない外部要因により直ちに処分することができない場合

①及び②の条件を満たす場合として以下のことが考えられます。

  • 大規模な災害等で立入禁止区域にある固定資産
  • 土地の地割れ、陥没等、埋め戻して使用可能な状態にするためには巨額な支出を要する土地・建物
  • 使用が困難となった構築物が、校舎と一体となっており、処分するためには長期にわたり校舎を閉鎖しなければならない場合

(2)この損失の処理科目は、事業活動収支計算書の「特別収支」の大科目「資産処分差額」に小科目「有姿除却等損失」等を設けて表示するものとしました。

(3)貸借対照表の資産計上額から除いた固定資産に対応する基本金(備忘価額を含む)は取崩しの対象としました。

Q
有姿除却等損失を計上する場合、どのような仕訳になるのか、また、有姿除却等損失による固定資産の減少は、固定資産明細表の「当期減少額」に含めて記載するのか。
A

固定資産の評価の対象となる固定資産の取得価額を 1000、減価償却累計額を 500、備忘価額を1とした場合、備忘価額1円を残し固定資産の計上額を減少させることとなります。これを仕訳で示すと以下のとおりです。

(借方)減価償却累計額 500       (貸方)固定資産 999
(借方)有姿除却等損失 499

なお、当該固定資産についてはその全額 1000 が基本金の取崩し対象となります。
有姿除却等損失による固定資産の減少がある場合は、固定資産明細表の当期減少額の欄に当該固定資産の取得価額から備忘価額を除いた金額 999 を記載します。また、当該固定資産の減価償却累計額については固定資産明細表の減価償却累計額から減少させる必要があります。

(4) 備忘価額

Q
備忘価額はなぜ残す必要があるのか。また備忘価額はどのように決定すればよいか。
A

第8号通知Ⅱ1.(1)において「備忘価額を残して貸借対照表の資産計上額から除く」とされているのは、固定資産の評価を実施した後も当該固定資産を引き続き保有していることを帳簿上明らかにするためのものであり、このため、備忘価額は通常1円とすることが多いと思いますが、これに限らず学校法人が自主的に規程等で合理的に定めることができます。(東京都処理標準では、備忘価格は1円又は100円の備忘価格を付すことができるとしています。)
なお、処分ができる状況である場合には、固定資産の評価の対象とはならないため、市場価格や売却価格はここでいう合理的に決めた価額とはならないので留意が必要です。

2.有価証券の評価換え

有価証券については、取得価額で評価としていますが、取得価額と比較してその時価が著しく低くなった場合は、その回復が可能と認められるときを除き、時価によって評価するものとしています(第27条)。従来その具体的な取扱いが明確ではなかったため、具体的な処理の基準を示すこととしました。

(1)当該有価証券が市場で取引され、そこで成立している価格(以下「市場価格」という。 )がある場合は、それを時価とするものとします。市場価格のない有価証券のうち、債券等については当該有価証券を取引した金融機関等において合理的に算定した価額を時価とするものとしました。
これらの時価が取得価額に比べて50%以上下落した場合には、特に合理的と認められる理由が示されない限り、時価が取得価額まで回復が可能とは認めないものとします。また時価の下落率が30%以上50%未満の場合には、著しく低くなったと判断するための合理的な基準を設けて判断するものとしました。

(2)市場価格のない有価証券のうち、株式については当該株式の発行会社の実質価額(一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に従い作成された財務諸表を基礎とした1株あたりの純資産額)を時価とみなすものとし、取得価額に比べて50%以上下落した場合には、十分な証拠によって裏付けられない限り、その回復が可能とは認めないものとしました。

(赤川 富彦)


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