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学校会計のチカラ
新会計基準(資金収支計算書の改正点及び活動区分資金収支計算書の作成ポイント)

資金収支計算書の改正点

【資金収支計算書作成の目的】
資金収支計算書の作成目的は、①当該会計年度の諸活動に対応する全ての収入及び支出の内容を明らかにする、②当該会計年度における支払い資金(現金預金)の収入及び支出の顛末を明らかにする、ことが作成目的です。

【今回の改正点】
(主な改正点)
① 活動区分収支計算書を新設
② 施設利用料収入が、大科目「資産運用収入」から「雑収入」へ計上区分が変更
③ 資産運用収入のうち、施設利用料収入以外の科目は、新たに設定された大科目
「受取利息・配当金収入」に計上
④ 資金収入・支出を伴う場合の過年度修正額の設定
資金収入を伴う場合 ⇒ 大科目「雑収入」小科目「過年度修正収入」
資金支出を伴う場合 ⇒ 大科目「管理経費支出」小科目「過年度修正支出」

(その他の改正点)
① 資産売却収入における小科目    ⇒施設売却収入、設備売却収入、有価証券売却収入
② 受取利息・配当金における小科目 ⇒第3号基本金引当特定資産運用収入
その他の受取利息・配当金収入
③ 設備関係支出    ⇒ 「その他の機器備品支出」を「管理用機器備品支出」名称変更

以下に示す、活動区分資金収支計算書作成の場合の基本的考え方は、平成25年9月2日付け文科省から「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)」(25高私参第8号、以下「第8号通知」という。)の通知に基づく考え方によるものです。

活動区分資金収支計算書三つの区分

活動区分収支計算書は、資金収支計算書の決算額を以下の3つの活動区分に区分し、活動ごとの資金の流れを明らかにするために新設されたもので、企業会計でいえばキャッシュ・フロー計算書に相当するものです。

<活動区分1 「教育活動による資金収支」>
「教育活動による資金収支」とは、資金収支計算書の資金収入及び資金支出のうち、活動区分2の①「施設整備等活動による資金収支」及び活動区分3の①「その他の活動による資金収支」を除いたものをいいます。

①学生生徒納付金収入は、納付金の内訳名称にかかわらず「教育活動による資金収支」の活動区分に計上します。

②特別寄付金のうち、寄付者の意思が施設設備拡充資金に充てるとして用途指定していない場合は、「教育活動による資金収支」の特別寄付金収入若しくは一般寄付金収入の科目で計上します。

③経常費補助金のうち、明らかに施設設備補助金である部分を除いた補助金収入を経常費等補助金収入科目で計上する。

<活動区分2 「施設整備等活動による資金収支」>
① 「施設整備等活動による資金収支」とは、施設若しくは設備の取得又は売却及び資産の額の増加を伴う施設若しくは設備の改修等に係る資金収入及び資金支出をいいます。(施設設備の修繕費や除却に伴う経費は含みませんのでご留意ください。)

② 寄付者の意思が、施設設備拡充等資金に充てると用途指定した場合に限り、施設整備寄付金収入の科目に計上する。

③施設設備の拡充等のための補助金収入は、施設設備補助金収入の科目に計上する。

④施設設備の売却による収入は、施設設備売却収入の科目に計上する。

⑤(何)引当特定資産取崩収入とは、施設設備に用途指定のある特定資産の取崩しに伴う収入のうち、「第2号基本金引当特定資産取崩収入」を除いたものをいいます。

<活動区分3 「その他の活動による資金収支」>
①「その他の活動による資金収支」とは、財務活動、収益事業活動、預かり金の受け払い等経過的な活動に係る資金収入及び資金支出、並びに過年度修正額をいい、新会計基準代14条の2第1項3号に定める「資金調達その他、掲げる活動以外の活動」に係る資金収入及び資金支出を いいます。

②①の中の財務活動とは、資金調達及び資金運用に係る活動をいいます。

③(何)引当特定資産取崩収入」とは、施設設備以外に用途指定のある特定資産の取崩しに伴う収入のうち、「第3号基本金引当特定資産取崩収入」を除いたものをいいます。

④「(何)引当特定資産取崩収入」の次の項の「(何)」には、「貸付金回収収入」、「預り金受入収入」
これらに類する収入が該当

⑤「収益事業元入金支出」の次の項の「(何)」には、「貸付金支払支出」、「預り金支払支出」
その他これらに類する収入・支出が含まれる

活動区分資金収支計算書作成時、特に留意すべき資金収入及び資金支出

【寄付金収入の区分】

Q
学園が創立○○周年事業に係る寄付金を募集するため、寄付金趣意書において、①講堂建築資金として8億円、②奨学基金の拡充として2億円と明示、目標総額10億円、寄付金一口10万円以上として寄付金の募集を行った。③寄付者の意思決定がどちらもなく、意思が特定できなかった場合はどのように処理すべきか。
A

①は、寄付金の募集趣旨が講堂建設であるので、寄附金を収受した場合は活動区分2「施設整備寄付金収入」に計上します。

②は、寄付金の募集趣旨が奨学基金であるので、寄付金を収受した場合は活動区分1「特別寄付金収入」に計上します。

③は、寄付者の意思が①であるとも②であるとも特定できない場合、主たる目的である活動区分に計上するのが妥当と考えますが、この場合は、寄付者とのトラブルを避けるため、一度寄付者にその意思を確認し、その上で、区分1とするか区分2とするかを明確にする方法が望ましいと考えます。

【補助金収入の区分】

Q
補助金収入には、「施設整備活動による資金収支」に属するものと、「教育活動による資金収支」に属するものがあるが、①新校舎建設のための融資に係る利子補給を目的とした補助金、②経常費補助金のうち設備関係支出を対象とする部分の補助金、③経常費補助金を構成する特別補助を対象とする部分の補助金、④特色GP(Good- Practice)等の補助金は、活動区分1に計上すべきか、区分2に計上すべきか。
A

①は、新校舎建設のための融資に対する利子の補助金であり、施設設備の拡充を図る目的に対し補助金交付者が交付したものであることから、補助金交付者の目的に照らし活動区分2に計上することとなります。

②は、私立大学等経費補助金の対象経費には、図書や車両、1個又は一組の価格が500万円未満の機器備品といった設備関係支出も含まれますが、活動区分2に計上する場合は、補助金交付者の交付目的が施設又は設備の取得等に当てることが明確な場合に限るとされておりますので、これらを対象とする部分は、図書や車両、機器備品といった設備関係支出を補助対象とした補助金を収受したとしても、当該補助金が私立大学等の教育活動の維持向上に等に寄与するための経常的経費の補助であることから、その収入の全てを活動区分1に計上することとなります。

③は、私学振興助成法第7条で規定された特別補助は、「私立学校における学術振興及び私立大学又は私立高等専門学校における特定の分野、課程等に係る教育の振興のため特に必要あると認めるとき」に従来から実施されている一般補助金を増額して交付できる特別補助は、その名称、目的、内容等から、一部が施設設備の購入に充てられることが想定される特別補助であっても、活動区分1に計上することとなります。④は、教育の質向上に向けた大学教育改革の取り組みに係る補助である「特色ある大学教育支援プログラム等の補助金」は、その名称、目的、内容等、一部が施設設備の購入に充てられることが想定されたとしても、活動区分1に計上することとなります。

【特定資産取崩収入及び繰入支出の区分】

Q
特定資産に係る取崩収入及び繰入支出は、「施設設備等活動による資金収支」に属するものと「その他の活動による資金収支」に属するものがあるがどのように区分すべきか。
A

① 「○○引当特定資産取崩収入」とは、施設設備に用途指定してのあるものでは、第2号基本金引当特定資産取崩収入を除いたもの及び施設設備以外に用途指定のあるものでは、第3号基本金引当特定資産取崩収入を除いたものという定義がありますので、例えば、減価償却引当特定資産に係る取崩収入又は繰入支出、施設設備拡充引当特定資産に係る取崩収入又は繰入支出等は、活動区分2に計上し、「退職給与引当金特定資産」に係る取崩収入又は繰入支出は、活動区分3に計上することとなります。

② 特定資産に係る収支は、会計基準第5条のただし書きにより、純額表示が認められていないため、総額表示をもって表示することとなります。

都道府県知事所轄学校法人に関する特例

1 計算書類の作成に関する特例
会計基準第4条の規定に係らず、都道府県知事所轄学校法人、例えば、幼稚園のみ設置する学校法人等は、活動区分資金収支計算書又は基本金明細表(高等学校のみを設置する学校法人は、活動区分収支計算書に限る)を作成しないことができます。

2 徴収不能引当ての特例
高等学校を設置する法人を除く都道府県知事所轄学校法人は、会計基準第28条の規定に係らず、徴収不能の見積額を徴収不能引当金に繰り入れないことができます。

3 基本金組み入れに関する特例
都道府県知事所轄学校法人は、会計基準第30条第1項の規定に係らず、第4号基本金の全額又は一部を基本金に組み入れないことができます。

計算書類の「大科目」は省略できるか

日本公認会計士会学校法人委員会報告第20号 昭和50.5.7 学校法人計算書類の表示について(その1)Ⅰ(1)において、資金収支計算書、消費収支計算書(事業活動収支計算書)及び貸借対照表のそれぞれの記載科目のうち、「大科目」については、文部省令第18号別表第1から別表第3までの所定の科目のみを使用しなければならない。」とし、大科目に計上する金額がたとえ「0円」でも大科目は省略できません。

(赤川 富彦)


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