経理規程とは
法人規模が大きくなるにつれ、部署の拡大、それに伴う人員の配置等により様々な考え方を持つ人が多く集まります。これらの人達が共同して学校経営行うためには、組織的経営を行うためのガイドラインすなわち学内規程が必要となります。この組織的経営を行うために成文化されたものが「学内諸規程」です。
学内諸規程には、組織関係規程や財務関係規程、人事・労務関係規程など広範囲に亘りますが、このうち財務関連諸活動に係る業務遂行上の規則を定めたものの中で、経理に関する方針及び手続き、処理方法などを成文化したのもが「経理規程」になります。詳細は、「新訂学校諸規程ハンドブック(齋藤力夫編著)」をご参照ください。
(お問合せ先:株式会社 霞出版 電話:03(3556)-6022 FAX:03(3556)-6023)
経理規程の体系例
経理規程には、以下の内容を盛り込むことが必要です。
- 総 則 ・・・ 目的、適用範囲、会計年度、会計単位(部門)、経理責任者
- 勘定科目及び会計帳簿 ・・・ 勘定科目、会計帳簿、会計伝票、帳簿書類尾保存期間
- 金銭及び会計業務 ・・・ 金銭範囲、金銭管理と出納責任者、領収書の発行、領収書の徴収、収納金の処置、支払い事務、金銭の照合及び過不足
- 資金会計 ・・・ 資金計画、金融機関との取引、有価証券及び特定資産の取得および処分資金の借り入れ及び資金の貸し付け
- 固定資産会計 ・・・ 固定資産の範囲、固定資産の取得、固定資産の価格、固定資産の管理、減価償却、固定資産の処分
- 物品会計 ・・・ 物品の範囲、物品の購入、物品の管理、物品の処分
- 予算管理 ・・・ 目的、予算編成、予算の種類、予算単位、予算期間、予算の責任者、予算編成の基本方針、予算の決定、予算の配布、予算の執行、予算の十種と流用、予備費、予算の補正、暫定予算
- 報告及び決算 ・・・ 目的、報告、当年度収支差額の処分、決算の確定
- 内部監査 ・・・ 目的、担当者、権限、計画、実施、守秘義務、報告
経理規程の目的
経理業務における、不正やミスの発見及びこれらの不正やミスの拡大防止を図るため、内部監査機能を設けることで、財務諸表の信頼性を高め及び業務処理の効率を高めることとなります。(内部監査規程は、経理規程の中に盛り込む場合は「章」を設けて規定するほか、別規程を設ける等の工夫が必要と考えます。)
資金会計と固定資産会計に係る規程作成上のポイント
【資金会計】
資金会計においては、①金融機関との取引の開始及び廃止、②資金の借入れ及び貸付け、③有価証券及び積立金(特定引当資産)の取得及び処分等は、理事長は評議員会への諮問事項として私学法で定められ、学校法人の法律ともいうべき寄付行為にも定めることとなっております。
特に、有価証券及び積立金(特定引当資産)の取得及び処分等に関する規定については、資金会計規定に別に定める規程「例えば、○○学園資産運用規程等」をもって運用する旨の規定を加えて資産運用することが望ましく、現に資産運用をしている学校法人においても、以下のことに留意し規程を作成(改正)することが望ましいと考えます。
留意事項1:投資は第1に安全性が先決、第2に換金性、第3に収益性(運用利益)の順に実行することが肝心である。
留意事項2:寄付行為において資金運用を他の者に委任している場合でも、運用成果は理事長に月次報告する。
留意事項3:重要な投資については、評議員会に諮問、理事会で決議する。
留意事項4:運用リスクの高い「仕組債」「デリバティブ取引」は極力避け、元本保証のある「国債、社債」、「積立金」等の資産運用をする。
等、以上の事項に留意するとともに、以下の事項を明確に規定することが必要と考えます。
① 安全性を重視した資産運用の基本方針
② 理事会・理事長・担当理事・実務担当者など資産運用関係者の権限と責任
③ 具体的な意思決定の手続
④ 理事会等による運用モニタリングなどの施行管理手続
⑤ 保有し得る有価証券や行いえる取引等の内容
⑥ 資産運用に係る限度額等
【固定資産会計】
固定資産会計といっても、①有形固定資産、②その他の固定資産、③特定資産(新会計基準において中科目として新設)に区分され、その範囲も幅広く、例えば、有形固定資産は、一般の会計基準と同様に所定の要件を超えるものもしくは満たすものは資産(例えば、少額重要資産を含む教育用機器備品及び管理用機器備品、図書等)とし、要件に満たないものは消耗品などの科目で処理し、将来の負債に対して備えるべき特定資産については小科目「第2号基本金引当特定資産」「第3号基本金引当特定資産」「○○引当特定資産」として処理することとなります。
なお、新会計基準においても、機器備品の計上基準及び図書の計上基準等及び固定資産の減価償却に係る会計処理(例えば、東京都通知による処理標準)等に大きな変更はないものと推測しますが、文科大臣、所轄知事からの通知に留意し、再度現行規程の見直しを図る等の検討が必要となります。
特に、有形固定資産については、所定の要件を超えるものの資産については「固定資産管理規程」、要件に満たないものは「物品管理規程」等を別途作成し運用することが望ましく、以下のことに留意し規程を作成(改正)することが望ましいと考えます。
留意事項1:管理単位と管理担当者の明確化
部門別に管理責任者を定め、管理担当区分と管理担当者を明確にする旨の規定
留意事項2:現物管理を行うための固定資産及び物品分類表等の作成明確化
① 「特定資産」を除く有形固定資産、その他の固定資産及び物品(用品・消耗品)を管理するた、分類表により分類された備品管理シール等により管理する旨の規定
② 土地、建物、建物付属設備、構築物、機器備品、車両、借地を管理するための台帳等を作成する旨の規定
③ 少額重要資産(学生、生徒、園児用机・椅子、講堂用折たたみ椅子等)を管理する旨の規定
留意事項3: 校舎(校地)等変更届出事項の明確化
学校法人は、設置認可において校地・校舎等の許認可を受ける関係上、校地校舎に変更が出る場合は、文部科学大臣又は都道府県知事に届け出ることが義務付けられておりますので、備忘的にその旨も規定化することが望ましいと考えます。
留意事項4: 固定資産の取得・処分に関する報告事項の明確化
本報告は、昭和60年2月4日に東京都総務局学事部長より、東京都知事所轄学校法人理事長宛に通知があったもので、現在も適用されておりますので、備忘的に報告する旨を規定化することが望ましいと考えます。
(赤川 富彦)