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第1回目は、資金収支内訳表を中心として、人件費支出内訳表や事業活動収支内訳表等の内訳表の作成について解説したいと思います。
資金収支内訳表や人件費支出内訳表、事業活動収支内訳表は、学校法人会計基準(以下、基準といいます。)において作成が求められる内訳表ですが、このうち資金収支内訳表の作成の趣旨及び留意点については、「資金収支内訳表について(通知)」(文管振第93号 昭和47年4月26日 文部省管理局通知)において、以下のように述べられています。
<資金収支内訳表作成の趣旨>
- 国または地方公共団体において、私立学校に対する経常費補助の効果の実態を適切に把握し、教育活動の実態に即した有効適切な振興策策定のための資料が得られるようにすること
- 教育研究のための諸活動は学部等の部門を単位として行われるものであるから、経常費補助の効果を具体的に把握するためには、その諸活動に対応する収入支出の内容を部門別に明らかにすることが必要である。また、これにより、学校法人においても、今後の効果的な運営の参考資料を得ることができる。
- 資金収支内訳表の作成は、学校法人がその諸活動に係る予算の編成・管理のための各予算単位ごとに行なう部門計算とは異なるもので、これと直接の関連を有するものではない。
<資金収支内訳表作成上の留意点>
- 資金収支内訳表に記載する収入支出は、資金収支計算書に記載された当該年度の収入支出の決算額のうち、当該年度の諸活動に対応するもののみであること
- 各部門の収入合計と支出合計は、合致させる必要はないこと
- 各部門に区分する収入支出は、当該部門における収入支出とし、当該部門において管理・執行する収入支出であるかどうかは問わないこと。
資金収支計算書の収入支出の決算額から学校法人の諸活動の内容や状況を総括的に把握することはできますが、教育研究のための諸活動は学部等の部門を単位として行われるため、経常費補助の効果を具体的に把握するためには、その諸活動に対応する収入支出の内容を部門別に明らかにすることが必要です。これにより、学校法人においても、今後の効果的な運営の参考資料を得ることができると考えられます。
また、資金収支計算書に比べて、資金収支内訳表に掲げる科目が省略されているのは、資金収支計算書では、当該会計年度の諸活動対応する収入支出の内容を示すとともに、当該会計年度における支払資金の収入支出のてん末を明らかにすることが要求されているものの、資金収支内訳表は、支払資金の収入支出のてん末を明らかにする必要がないため、当該会計年度の収入支出であっても、当該会計年度の諸活動に対応しないものが除外されています。
このように、資金収支内訳表は、経常費補助の効果を具体的に把握するために、その諸活動に対応する収入支出の内容を部門別に明らかにすることが目的であるため、作成のポイントは、部門の設定の仕方と収入支出の把握方法であることがご理解いただけることと思います。
それでは、今回はまず基準において、資金収支内訳表における部門の設定がどのように規定されているのか解説しましょう。
第13条 資金収支内訳表には、資金収支計算書に記載される収入及び支出で当該会計年度の諸活動に対応するものの決算の額を次に掲げる部門ごとに区分して記載するものとする。
- 一 学校法人(次号から第五号までに掲げるものを除く。)
- 二 学校(専修学校及び各種学校を含み、次号から第五号までに掲げるものを除く。)
- 三 研究所
- 四 各病院
- 五 農場、演習林その他前二号に掲げる施設の規模に相当する規模を有する各施設
- 前項第二号に掲げる部門の記載にあたっては、二以上の学部を置く大学にあっては学部(当該学部の専攻に対応する大学院の研究科、専攻科及び別科を含む。)に、二以上の学科を置く短期大学にあっては学科(当該学科の専攻に対応する専攻科及び別科を含む。)に、二以上の課程を置く高等学校にあっては課程(当該課程に対応する専攻科及び別科を含む。)にそれぞれ細分して記載するものとする。この場合において、学部の専攻に対応しない大学院の研究科は大学の学部とみなす。
- 学校教育法第百三条に規定する大学に係る前項の規定の適用については、当該大学に置く大学院の研究科は大学の学部とみなす。
- 通信による教育を行なう大学に係る第二項の規定の適用については、当該教育を担当する機関は大学の学部又は短期大学の学科とみなす。
資金収支内訳表は、第13条第1項及び第2項に規定のとおり、大学では学部別、短大では学科別、高校では課程別に細分して記載します。また、認可又は認可外保育所を有している場合(在学者又は教職員及び役員が養育するものを主たる対象者とする場合は除く。)や認定こども園(幼保連携型や幼稚園型)についても原則として1つの部門として取り扱います。専修学校で高等課程と専門課程を有する場合には、基準第13条第2項を斟酌し、高等課程と専門課程を区分するものと考えられます。なお、人件費支出内訳表及び事業活動収支計算書については、上記第2項の規定の適用がない点にご留意ください。
(公認会計士 芦澤 宗孝)