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学校会計のチカラ
令和7年度 学校法人会計基準改正(引当金について)

学校法人の会計・税務について最近の改正点を中心にポイントごとにQ&A形式で解説を行います。今回は令和6年9月30日に文科省から公布された改正学校法人会計基準について実務上留意すべき点を解説します。



1 賞与引当金について

Q
 改正学校法人会計基準第11条第2項にて「退職給与引当金のほか、引当金については、会計年度の末日において、将来の事業活動支出の発生に備えて、その合理的な見積額のうち当該会計年度の負担に属する金額を事業活動支出として繰り入れることにより計上した額を付すものとする」と規定されました。当学校法人では、今まで引当金として退職給与引当金しか計上してきませんでしたが、今後は企業会計と同様、賞与引当金の計上も必要となると聞いています。賞与引当金とはどのような性質のもので、どのように決算処理したらよいか教えてください。
A

 賞与引当金とは、学校法人と教職員との雇用関係に基づき、毎月の給料の他に賞与を支給する場合において、翌年度に支給する教職員の賞与のうち、支給対象期間が当年度に帰属する支給見込額について、貸借対照表の流動負債の部に計上されるものです。
 賞与は、給与規程等において、支給の時期や支給対象期間が定められている場合が多く、教職員の労働提供の対価として、発生する支出と考えられます。
 したがって、収入と支出の適切な対応を図り、学校法人の運営の的確な把握を行うため、賞与は、支給時の一時の支出として処理するのではなく、翌年度に支給する教職員の賞与のうち、支給対象期間が当年度に帰属する支給見込額について、当年度の支出として引当計上することが望ましいと言えます。学校法人の会計実務上、賞与引当金について明確な規定が今まで存在しなかったことから、ほとんどの学校法人で計上を行ってこなかったと思いますが、今回の改正によりこの点が明確となりましたので、令和7年度の本決算処理から対応が必要となります。
 それでは、具体例に基づき賞与引当金の決算処理方法を解説します。

<前提>
 賞与引当金は、支給見込額を基に算定されますので、過去の賞与の支給実績、翌年度の給与のベースアップ等を勘案して、翌年度の賞与の支給見込額を算出し、そのうち当年度に帰属する額を計上します。

①決算日  3月31日
②賞与支給日  夏季賞与 6月
        冬季賞与 12月
③支給対象期間  夏季賞与 12月1日から5月31日
         冬季賞与 6月1日から11月30日
④翌年度の夏季賞与の支給見込額 30,900円
         実際の支給額 31,000円の場合

期末賞与の支給の他に、当該期末賞与に対応する学園負担の社会保険料の見積り計上も必要となります。これを賞与引当金に含めて計上するか、別途非資金科目の期末未払金に計上するかについて明確な指針はありませんので、各学園の判断で計上方法を検討する必要があります。

● 引当金計上時の仕訳

<事業活動収支計算の仕訳>

(借方)賞与引当金繰入額 20,600(貸方)賞与引当金(流動負債)  20,600

小科目「賞与引当金繰入額」は「教育活動収支」の大科目「人件費」に新たに科目を設ける必要があります。

 支給対象期間が12月1日から5月31日の夏季賞与は、翌年度の6月に支給しますが、支給対象期間のうち12月1日から3月31日までは当年度に帰属するため、この期間に対応する金額を賞与引当金として計上します。

 30,900×(4カ月/6カ月)=20,600円

 なお、令和7年3月27日に文科省から通知された「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成等について(通知)」によれば、令和7年度の期首時点で発生している引当金を令和7年度の貸借対照表に計上する場合、令和7年度の事業活動支出として引当金に繰り入れる金額は、事業活動収支計算書の「特別収支」の大科目「その他の特別支出」に、「賞与引当金特別繰入額」などの小科目を設けて処理することができるとされています。
 したがって、上記例示の賞与が2025年6月支給の夏季賞与であったとしたら、引当対象となった20,600円は、令和7年度の特例として、期首時点の仕訳で以下の通り処理することができます。

<事業活動収支計算の仕訳>

2025/4/1期首

(借方)賞与引当金特別繰入額 20,600(貸方)賞与引当金(流動負債)  20,600

小科目「賞与引当金特別繰入額」は「特別収支」の大科目「その他の特別支出」に新たに科目を設ける必要があります。

 そして、実際に夏季賞与を支給するときの仕訳は以下の通りです。

● 支給時の仕訳

<資金収支計算の仕訳>

(借方)教員・職員人件費支出 31,000(貸方)現金預金   31,000

 資金収支計算書上の仕訳は従来から変更ありません。

<事業活動収支計算の仕訳>

(借方)賞与引当金(流動負債)  20,600(貸方)教員・職員人件費  20,600

 支給額31,000円のうち、20,600円は引当金として計上済みであるため、事業活動収支計算上は前年度(令和7年度の場合は期首時点)に引当て済みの金額を控除して人件費を計上します。


 賞与引当金は今後学校法人会計の実務において、重要な会計方針となりますので、以下の通り引当金の計上基準を注記します。

<注記例>
引当金の計上基準
 賞与引当金
 教職員に対する賞与の支給に備えるため、当年度に負担すべき支給見込額を計上している。

 なお、令和7年度の賞与引当金の計上初年度は、【重要な会計方針の変更等】において以下の通り注記も必要となります。

 賞与引当金の計上
 学校法人会計基準の改正により、引当金の計上基準が明確化されたことに伴い、当年度から計上している。



 文中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり、筆者が所属する法人・組織の公式的な見解ではないことを申し添えます。



公認会計士・税理士 津村 玲


とは

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