今週は不動産賃貸業に係る消費税の取扱いについてです。学校経営の財政的基盤を強化するため、不動産賃貸業を行っている学校法人も多いと思います。
そこで今回は不動産賃貸業を営んでいる学校法人からよく質問がある消費税の取扱いについて質疑応答形式で見ていきたいと思います。
Q
当学校法人は当校の学生向けに食事付きの居住用賃貸を行っています。
消費税の取扱いはどのようになりますか?
A
食事付きの居住用賃貸料のうち、食事提供部分は課税売上となり、居住用賃貸部分は非課税売上となります。
なお、食事提供部分と居住用賃貸部分が区分されている場合は、原則としてその区分に従うこととし、区分されていない場合には、合理的な方法により区分することとなります。
Q
当学校法人は1棟建物(10階建)を所有しており、1階部分は店舗として貸付け、2階~10階部分は居住用として貸付けています。
賃貸借契約書でもそれぞれ用途が明らかにされています。消費税の取扱いはどのようになりますか?
A
店舗等併設住宅の店舗部分(1階部分)は課税売上となり、居住用部分(2階~10階部分)は住宅の貸付に該当し、非課税売上となります。
Q
当学校法人所有の建物の一室を居住用としてB法人に貸付けています。B法人はこの一室をB法人の従業員に転貸することが明らかです。この場合のB法人に対する建物の一室の貸付けの消費税の取扱いはどのようになりますか?
A
住宅の貸付けについては、契約において人の居住の用に供することが明らかにされているものについて非課税売上となるため、B法人がB法人の従業員に転貸する場合であっても、転貸後において住宅として使用することが契約において明らかにされている場合には、住宅の貸付けに該当するものとして取り扱い、非課税売上となります。
もちろん、B法人がB法人の従業員に貸付ける場合も住宅の貸付けに該当するものとして非課税売上となります。
Q
当学校法人はこの度建物一棟を購入し、居住用としての貸付けを予定しています。
住宅としての貸付の他に施設利用サービスや駐車場利用サービスなど多岐にわたるサービスを行うつもりです。そこで各サービス利用料の収受方法として以下の2パターンを検討しています。
それぞれの消費税の取扱いはどのようになりますか?
① 住宅貸付以外のサービスも含めて『家賃』として収受する
② 住宅貸付以外のサービスは『各サービスごと』に収受する
A
契約上、各サービス利用料の収受方法によって消費税の取扱いは異なってきます。
基本的考え方は次のとおりです。
①ですが、収受対象のうち住宅貸付部分以外の施設利用等のサービス部分については、一括家賃として収受したとしても合理的に区分のうえ課税売上となります。
ただし、その施設利用等のサービスが駐車場利用サービスのように全住宅の貸付に付属する場合など、住宅に対する従属性がより強固な場合には非課税売上となります。
また、もともと居住用としての従属性が認められる家具などの動産利用サービスについても家賃として収受している場合には非課税売上となります。しかし、いずれも入居者の別注によりサービス提供しているものは課税売上となります。
②については、収受対象ごとに個別に内容を判定したうえで課税売上・非課税売上となります。
以下、サービス内容ごとに消費税の取扱いをまとめたものになります。ご参照ください。
サービス内容 | 『家賃』として収受する場合 | 『各サービスごと』に収受する場合 | |
課非区分 | 課非区分 | ||
住宅貸付料 | 非課税売上 | 非課税売上 | |
共有部分の管理用 | 非課税売上 | 非課税売上 | |
駐車場利用料 | 車所有の有無にかかわらず1戸につき1台以上の駐車場が付属する場合 | 非課税売上 | 課税売上 |
入居者の選択により賃貸する場合 | 課税売上 | 課税売上 | |
プール・アスレチック・温泉等施設利用料 | 住人以外利用不可の場合 | 非課税売上 | 課税売上 |
住人以外利用可(有料)の場合 | 課税売上 | 課税売上 | |
家具・電気製品等使用料 | 入居者の選択の如何にかかわらず、あらかじめ一定の家具等を設置して賃貸している場合 | 非課税売上 | 課税売上 |
入居者の選択により家具等を設置している場合 | 課税売上 | 課税売上 | |
倉庫使用料 (同一敷地内に設置) |
入居者の選択にかかわらず、あらかじめ倉庫を設置している場合 | 非課税売上 | 課税売上 |
入居者の選択により倉庫を利用させている場合 | 課税売上 | 課税売上 | |
電気・ガス・水道利用料 | 各戸の使用実績を請求する場合 | ― | 課税売上 |
住宅貸付料に含まれる | 非課税売上 | ― | |
一定額を請求する場合 | ― | 課税売上 | |
CATV利用料 (各戸に配線済みであり、通常のテレビ放送については、アンテナ端子に配線するだけで簡単に受信できるが、有線放送や衛星方法については、各戸において別途ケーブル・テレビジョン会社と契約する。) |
非課税売上 | 課税売上 | |
ハウスキーピング料 | 入居者の選択の如何にかかわらず、あらかじめハウスキーピング・サービスを付している場合 | 非課税売上 | 課税売上 |
入居者の選択によりハウスキーピング・サービスを付している場合 | 課税売上 | 課税売上 | |
管理料(共有部分の掃除、メインテナンス等に係る費用) | 非課税売上 | 非課税売上 | |
警備料 | マンション全体の警備を行う場合 | 非課税売上 | 非課税売上 |
マンション全体の警備のほか、ホームコントロール盤により専用部分(各住戸)の防犯・防火等のチェックを行う場合 | 非課税売上 | 非課税売上 | |
ルーム・メインテナンス料(居室内の施設・設備のトラブルについては専門スタッフによる修理・点検を行う。) | 非課税売上 | 課税売上 | |
フロント・サービス料(メッセージ・サービス、荷物預かりサービス、荷物配送サービス、クリーニング取次ぎサービス等) | 非課税売上 | 課税売上 |
斎藤総合税理士法人
税理士 箭内雄太