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学校会計のチカラ
消費税(届出の具体的事例)

今週から2回にわたって消費税について解説します。2回とも学校法人で想定される消費税に関する具体的事例について質疑応答形式でご紹介していきます。少しでも皆様の実務に役立てば幸いです。今週は消費税の届出書についてです。
消費税には様々な届出書がありますが、なかには届出書一枚で納付税額が大きく変化する場合もあり、提出する届出書・提出期限には細心の注意が必要です。
そこで今回はどの学校法人でも起こりえる特に注意が必要な事例をみていきます。

Q
当学校法人は設立年度から今年度まで消費税の免税事業者でしたが、前年度の課税売上高が1,000万円を越えたため来年度からは消費税の課税事業者になります。
消費税の課税事業者になるにあたり、所轄税務署長に提出する届出書はありますか?
また、検討すべき事項はありますか?
A

来年度から消費税の課税事業者に該当するとのことですが、課税事業者に該当すると分かった時点(前年度の課税売上高が確定し、当該金額が1,000万円を超えたとき)から速やかに納税地の所轄税務署長に『消費税課税事業者届出書(基準期間用)』を提出しなければなりません。

次に検討すべき事項ですが、基準期間における課税売上高(前年度の課税売上高)が5,000万円以下であれば来年度から簡易課税制度を選択することができます。
そこで、原則計算(一般課税)と簡易計算(簡易課税)で消費税額を計算した場合、どの計算方法がより消費税額を軽減できるかあらかじめ検討する必要があります。
なお、簡易課税制度を選択したら、事業を廃止した場合を除き、原則2年間継続した後でなければ簡易課税制度の選択をやめることができない(来年度・再来年度は簡易課税制度をやめることができない)ため、原則計算・簡易計算の検討は来年度だけでなく、再来年度についてもしなければなりませんのでご注意ください。

検討した結果、簡易課税制度を選択するのであれば、『消費税簡易課税制度選択届出書』を簡易課税制度の適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(今年度末まで)に納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

以下『消費税簡易課税制度選択届出書』を提出する際の留意点になります。

  1. 一度提出した『消費税簡易課税制度選択届出書』の効力は『消費税簡易課税制度選択不適用届出書』を提出しない限り、継続することになりますので注意が必要です。
    簡易課税制度の適用をやめる場合には、適用を受けてから2年継続後から原則計算への変更が可能になります。簡易課税制度の適用をやめようとする場合には、適用をやめようとする課税期間の初日の前日までに、『消費税簡易課税制度選択不適用届出書』を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
  2. 調整対象固定資産又は高額特定資産を取得し、一定の要件を満たした場合には、『消費税簡易課税制度選択届出書』の提出が制限される場合があります。
    なお、今回のご質問では来年度に初めて消費税の課税事業者に該当するとのことなので、要件は満たさず届出書の提出の制限はされません。
    なお、上記ご紹介した届出書以外にも消費税法に定められている届出書はいくつかあり、ご参考までに主な届出書をご紹介します。
    事業者は、下記発生事由が生じた場合にその該当する届出書をその提出期限までに、納税地の税務署長に提出しなければなりません。
発生事由届出書名提出期限
基準期間における課税売上高が1,000万円超となったとき消費税課税事業者届出書(基準期間用)事由が生じた場合速やかに
特定期間における課税売上高が1,000万円超となったとき消費税課税事業者届出書(特定期間用)事由が生じた場合速やかに
基準期間における課税売上高が1,000万円以下となったとき消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書事由が生じた場合速やかに
簡易課税制度を選択しようとするとき
※1
消費税簡易課税制度選択届出書適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで
※4 ※5
簡易課税制度の選択をやめようとするとき
※2
消費税簡易課税制度選択不適用届出書適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで
※5
免税事業者が課税事業者になることを選択しようとするとき消費税課税事業者選択届出書選択しようとする課税期間の初日の前日まで
※4 ※5
課税事業者を選択していた事業者が免税事業者に戻ろうとするとき
※3
消費税課税事業者選択不適用届出書選択をやめようとする課税期間の初日の前日まで
※5

※1 『消費税課税事業者選択届出書』を提出して課税事業者となっている場合、新設法人若しくは特定新規設立法人に該当する場合又は高額特定資産を取得した場合には、一定期間『消費税簡易課税制度選択届出書』を提出できない場合があります。

※2 『消費税簡易課税制度選択届出書』を提出した場合には、原則として、適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、適用をやめようとする旨の届出書を提出することができません。
ただし、災害その他やむを得ない事由が生じたことにより被害を受けた事業者が、その被害を受けたことにより、簡易課税制度を選択する必要がなくなった場合には、所轄税務署長の承認を受けることにより、災害等の生じた日の属する課税期間等から簡易課税制度の適用をやめることができます。

※3 『消費税課税事業者選択届出書』を提出した場合には、原則として、適用を開始した課税期間の初日から2年(一定の要件に該当する場合には3年。)を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、適用をやめようとする旨の届出書を提出することができません。

※4 事業を開始した日の属する課税期間から『消費税簡易課税制度選択届出書』『消費税課税事業者選択届出書』に係る制度を選択する場合には、これらの届出書をその事業を開始した日の属する課税期間の終了の日までに提出すれば、その課税期間から選択することができます。

※5 やむを得ない事情があるため、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出できなかった場合には、提出できなかった事情などを記載した申請書を、やむを得ない事情がやんだ日から2か月以内に所轄税務署長に提出し、承認を受けることにより、その課税期間の初日の前日にこれらの届出書を提出したものとみなされます。

斎藤総合税理士法人
税理士 箭内雄太


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