今月は学校法人の決算について解説をしています。第4回目も、前回に引き続き個別の決算事項について説明していきます。今回は第4号基本金や基本金に関する注記、計算書類の純額表示等についてです。
2. 個別の決算事項
(13)基本金(続き)
④ 第4号基本金
「学校法人会計基準第30条第1項第4号に規定する恒常的に保持すべき資金の額について(昭和62年8月31日文部大臣裁定(平成25年9月2日最終改正))」では、第4号基本金の額は、前年度の事業活動収支計算書の教育活動収支の人件費(退職給与引当金繰入額及び退職金を除きます)、教育研究経費、管理経費(ともに減価償却費を除きます)及び教育活動外収支の借入金等利息の合計額を12で除して計算するものとしています。ただし、当該計算額が前年度の第4号基本金の額の80%以上100%未満のときには、前年度の額によることとされています。また100%超120%以内のときには、前年度の額によることができるものとされています。
第4号基本金の組入れ額の計算は、原則として法人全体で行いますが、会計単位及び資金が部門別に独立している場合には、部門別に行うことができるとされています。
なお、知事所轄学校法人が平成29年度の決算において第4号基本金の額を計算する場合で、計算額が80%以上100%未満のときには上記の特例によらず、計算額まで第4号基本金を取り崩す必要があります。
知事所轄学校法人では第4号基本金の全部又は一部を基本金に組み入れないことができる(学校法人会計基準第39条)とされています。第4号基本金を組み入れていない場合には、計算書類の注記においてその旨を記載することになります。
⑤ 基本金に関する計算書類の注記
翌会計年度以後の会計年度において基本金への組入れを行うこととなる金額は計算書類の注記に記載することとされています(学校法人会計基準第34条第6項)。
また、当会計年度末において第4号基本金に掲げる金額に相当する資金を有していない場合には、その旨及び当該資金を確保するための対策の記載が必要となります(同条第7項)。第4号基本金に相当する資金には、貸借対照表に計上されている現金預金、支払資金としての機能をもっており、支払資金と同様に使用されている金融商品や第4号基本金に対応する名称を付した特定資産は含まれますが、その他の特定資産は含まれません(「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)(平成25年9月2日 高私参第8号)」)。
(14)純額表示等
学校法人会計基準第5条では、計算書類に記載する金額は総額をもって表示するものとし、例外的に、預り金に係る収入と支出等の経過的な収入と支出、及び食堂に係る収入と支出等の教育活動に付随する活動に係る収入と支出について純額で表示できるものと定めています。
預り金等の経過的な収支については、総額表示と純額表示の双方の表示方法が認められており、勘定科目ごとにどちらの方法を採用するかを選択することができます。純額表示を採用することで収支計算書の合計金額が大きく相違することがあるため、相殺金額に重要性がある場合には、どのような表示方法を採用しているかを計算書類の注記に記載します(「計算書類の注記事項の記載に関するQ&A(日本公認会計士協会学校法人委員会研究報告第16号)」)。
補助活動事業に関する収支を純額表示する場合、収入と支出で相殺できる範囲は、収入側の項目は売上高、受取利息、雑収入、支出側の項目は売上原価、人件費、経費に属する科目ですが、そのうち売上高と売上原価の項目は必ず相殺するものとされています(「補助活動事業に関する会計処理及び表示並びに監査上の取扱いについて(日本公認会計士協会学校法人委員会実務指針第22号)」)。また、純額で表示した補助活動に係る収支に重要性がある場合には、計算書類の注記のその他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項として、相殺した科目及び金額を記載します(「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)(平成17年5月13日17高私参第1号)」Ⅱ.(4))。
なお、補助活動事業の経理を学校会計とは別に管理している場合においても、学校法人の計算書類を作成するときには学校会計に取り込んで処理を行う必要があります。
(15)附属明細表
学校法人会計基準第4条第3号では、貸借対照表に付属する明細表として、固定資産明細表、借入金明細表、基本金明細表を作成するものと定めています。
第2号基本金や第3号基本金については、基本金明細表の付表として、基本金の組入れに係る計画表や基本金の組入れに係る計画集計表を作成します。なお、高等学校を設置しない知事所轄学校法人では、基本金明細表は作成しないことができるものとされています(学校法人会計基準第37条)。
永和監査法人
公認会計士 大島隆光