前週に引き続き、今回も各収益事業の取り扱いを解説いたします。
(1) 不動産販売業
収益事業となる不動産販売業とは、不動産の販売を業とするものをいいます。
学校法人等が不動産を譲渡した場合、その譲渡行為が販売行為なのか、又は、不動産の処分行為なのかが常に問題になります。販売行為とは、不動産である土地、建物等を不特定又は多数の者に反復して又は継続して譲渡することであり、収益事業に該当します。一方、不動産の処分行為とは、学校法人等が固定資産として所有していた土地建物等を、資金繰りその他の都合で譲渡することで収益事業には該当しません。
(2) 金銭貸付業
収益事業とされる金銭貸付業には、消費貸借契約によって金銭を貸し付ける業務のほか、手形の割引業務も含まれます。また、不特定又は多数の者を対象とした貸付に限らず、特定の者又は少数の者を対象とした場合にも該当します。(法基通15-1-14)
前述のように、学校法人等の行う金銭の貸付けは、特定又は少数の者に対する貸付であっても収益事業に該当しますので、当該法人の組合員又は会員等の構成員(教職員等)だけを対象とした金銭の貸付けである場合も、原則として収益事業に該当します。しかし、法人の構成員が拠出した資金を、低利で、その構成員に貸し付けている場合には、あえて課税しなくとも一般営利企業との課税の公平が害されることもないので、収益事業には該当しないとされています。
すなわち、①組合員、会員等の拠出に係る資金を主たる原資とし、②当該組合員、会員を対象とした金銭の貸付けで、③その貸付金の利率が全て年7.3%(契約日の属する年の租税特別措置法93条2項に規定する特例基準割合が年7.3%未満である場合には、当該特例基準割合)以下であるときは、収益事業の金銭貸付業に該当しません。(法基通15-1-15)
(3) 印刷業
印刷業とは、書籍、雑誌、新聞その他の印刷物の印刷を請負うことを指しますが、謄写印刷業、タイプ孔版印刷業及び複写印刷業などが含まれ(法基通15-1-30)、印刷の種類、方法は問いません。したがって、学校等において、学生生徒等から各種のコピー料を徴している場合には、印刷業を行っていることになり、収益事業に該当します。
(4) 出版業
学校法人等が書籍、雑誌、新聞、各種の名簿、統計数値等の出版物を制作して販売する場合には出版業に該当します。なお、次の出版事業は収益事業に該当しません。(法令5条1項12号)
- 特定の資格を有する者を会員とする法人が、その会報その他これに準ずる出版物を、主として会員に配布するために行うもの
- 学術、慈善その他公益を目的とする法人が、その目的を達成するため会報を専らその会員に配布するために行うもの
(5) 席貸業
収益事業に該当する席貸業とは、①不特定又は多数の者の娯楽、遊興又は慰安の用に供する席貸業、及び②①以外の席貸業で次に掲げるものを除くものとされています。(法令5条1項14号)
- 国又は地方公共団体の用に供するための席貸業
- 社会福祉事業として行われる席貸業
- 学校法人(準学校法人を含む)、職業訓練法人がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸業
- 法人がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸業で、当該法人の会員その他これに準ずる者の用に供するもののうちその利用の対価が実費の範囲を超えないもの
学校法人等が不特定又は多数の者の娯楽、遊興又は慰安の用に供する席貸業は、相手のいかんを問わず収益事業に該当しますが、具体的には映画、演劇、舞踊、舞踏、宴会、パーティなどのための席貸しがこれにあたります。
また、学校法人等が、興行を目的として集会場、野球場、テニスコート、体育館などを利用する者に対してその貸付けを行う事業は、娯楽・遊興等のための席貸しに該当します。(法基通15-1-38)
(6) 料理店業その他の飲食店業
学校法人等が営む料理店業その他の飲食店業は、収益事業に該当することとなりますが、この飲食店業には自ら調理をして飲食物の提供をするもののほか、他の調理業者などから仕出しを受けて飲食物の提供をするものも含まれます。学校法人における食堂の経営は、料理店業その他の飲食店業に該当します。
なお、学校法人がその設置する小学校、中学校、特別支援学校等において、学校給食法等の規定に基づいて行う学校給食の事業は、学校教育の一環として行われる行為ですので、収益事業たる「料理店業その他の飲食店業」にはあたりません。(法基通15-1-43)
(斎藤総合税理士法人 税理士 内藤 浩之)