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学校会計のチカラ
私立学校法について

私立学校法(法律270号として昭和24年制定)とは、同法第1条にあるように、私立学校の特性にかんがみ、その自主性を重んじ、公共性を高めることによって、私立学校の健全な発達を図ることを目的として制定された法律です。

私立学校の「特性」とは、国公立の学校は、いずれも、その経費の相当部分が公費によって補われることに対し、私立学校は私人の寄附財産等によって設立・運営されることを原則とする特徴的な性格です。また、「自主性」とは、私立学校が上記の特性により設立されたことに伴う自律的な運営を行うという性格をいい、これらの特性と性格は、建学の精神や立地地域等の環境により独自の校風が強調されるという点にあります。また、所轄庁の権限ができるだけ制限されているのもこれらの特性や性格に根差すものと考えられています。

【55年ぶりの私学法の改正】

平成16年には、55年振りに法人の機関制度などガバナンスのあり方が見直されました。①理事、監事、評議員会制度の改善(第30条、第36条から第38条、第42条、第46条、第49条関係)②財務情報公開の義務化(第47条、第66条関係)③私立学校審議会の構成の見直し(第10条、第11条関係)などの基本的な大改正が行われ、平成17年4月1日からの施行とされました。

【平成26年、私学法の改正】

平成26年には、学校法人の運営において極めて不適切な学校法人があるとして、文部科学事務次官通知(平成26年法律第15号 平成26年4月2日改正公布、施行)により私立学校法の一部が改正されました。改正ポイントは大きく3点あり、それらの趣旨及び概要は以下のとおりであります。

(1) 改正の趣旨
文部科学省は、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会の検討結果を踏まえ、運営が極めて不適切な文部科学大臣所轄学校法人に対して、解散を命じざるを得ない事案の発生など、学校法人をめぐる重大な問題が生じてきていることに対し、私立学校の自主性を尊重しつつ、私立学校全体に対する不信感につながるような異例な事態に所轄庁が適切に対応するため、学校法人が法令の規定に違反したとき等に、所轄庁が当該学校法人に対し、必要な措置を講ずるよう命ずることができる等の所要の改正を行ったものです。

(2) 改正の概要

① 理事の忠実義務
学校法人の理事は、法令及び寄附行為を遵守し、学校法人のため忠実にその職務を行わなければならないこととしたこと。
(第40条の2関係)

② 所轄庁による必要な措置命令等

  1. 所轄庁は、学校法人が、法令の規定、法令の規定に基づく所轄庁の処分若しくは寄附行為に違反し、
    又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは(注1)、当該学校法人に対し、期限を定めて、違反の停止、
    運営の改善その他必要な措置をとるべきことを命ずること(以下「措置命令」という。)ができることとしたこと。
    (第60条第1項関係)

    (注1) 「法令の規定、法令の規定に基づく所轄庁の処分若しくは寄附行為に違反し、又はその運営が
    著しく適正を欠くと認めるとき」とは、次の場合を想定したことに留意します。

    1. 例えば、学校の運営に必要な資産の不足により、教育研究活動へ支障が生じている場合を想定し、
      具体的には、

      • 学校法人の所有する土地・建物が競売により売却され、必要な校地・校舎の一部が保有されていない。
      • 教職員の賃金未払いが生じ、必要な教職員数が不足している。など
    2. あるいは、理事会において必要な意思決定ができず、教育研究活動への支障や、学校法人の財産に重大な損害が生じている場合を想定し、
      具体的には、

      • 理事の地位をめぐる訴訟により、必要な予算の編成や事業計画の策定がなされず、教育研究活動に支障が生じていること。
      • 理事が、第三者の利益を図る目的で学校法人の財産を不当に流用し、学校法人の財産に重大な損害を与えていることなど。
  2. 学校法人が措置命令に従わないときは、所轄庁は、当該学校法人に対し、役員の解任を勧告することができる(注2)こととしたこと。(第60条第9項関係)

    (注2) 「役員の解任を勧告することができる場合」とは、例えば、一部の理事が独断専行により学校法人
    に不利益を与えており、その停止を命じたにも関わらず、理事の不適切な行為が止まないときに、
    当該理事の解任を勧告すること等を想定しています。

  3. 所轄庁は、役員の解任の勧告をしようとする場合には、あらかじめ、当該学校法人の理事又は解任しようとする役員に対して弁明の機会を付与するとともに、私立学校審議会等の意見を聴かなければならないこととしたこと。(第60条第10項関係)

③ 報告及び検査
所轄庁は、この法律の施行に必要な限度において、学校法人に対し、その業務若しくは財産の状況に関し報告をさせ、又はその職員に、当該学校法人の事務所等に立ち入り、その業務若しくは財産の状況等を検査させることができる(注3)こととしたこと。(第63条第1項関係)

(注3)

  1. 報告徴収及び検査は,任意の報告の求めや調査では,必要な書類等の提出が行われないなど十分な対応がなされず,所轄庁が法人運営の実態を十分に確認できない場合に、措置命令等を行うために必要となる事実を確認するための行為として行われることを想定しています。
  2. 所轄庁が、法人運営の実態を書類上で十分把握できない場合に、措置命令等を行うために必要となる事実を確認するための行為として行われることを想定しています。

④ その他所轄庁の対応

  1. 重大な問題を抱える学校法人に対して、所轄庁が適切に対応できるよう必要な規定の整備を行うとともに、私学の自主性を尊重して、公共性を高めるという私立学校法の目的は変わるものではなく、所轄庁においては、その趣旨を踏まえた運用を行う必要があること。
  2. 学生等が在籍している学校法人に対し解散を命ずる場合には、当該学生等の修学機会の確保するため、所轄庁においては、転学等が円滑に行われるための支援等に関係する所轄庁と連携し、積極的に取り組む必要があること。

等以上、今般の改正は、学校法人理事者等及び管理職のガバナンス、コンプライアンスが欠如していること及び内部牽制制度が確立されていないことによるものであるので、このような学校法人は早急に必要な規程等を整備し、各理事者及び管理職に就くものは倫理観を高め職務を遂行していただきたいものと考えます。

(赤川 富彦)


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